小さなヒーロー ab×sk

◯ ページ7

なんとなく分かってた。

このまま、阿部ちゃんが合格出来たなら

きっと遠くに行ってしまう。

僕なんかじゃ届かない様な

そんな場所に行ってしまう。

だから、人一倍頑張らなきゃいけなかった。

ダンスだって、アクロバットだって
誰よりも綺麗に
誰よりも高く。

後輩に言われた言葉を気にしてる場合じゃない。

毎日、残って練習をする。

時間が来たら家で筋トレとフリ確認。

なのに、最近
身体がうまく動いてくれない。


なんで？
怪我もしてないし

熱もないのに…

おかしいな。


昨日は、
阿部ちゃんから合格の報告がきて

嬉しくて

でも不安で

全然寝れなくて…



あー…
阿部ちゃんに会いたい。

その時。
背中が大きな温もりに包まれた。

「佐久間。ただいま。」

あ、この匂い。

阿部ちゃんだ。

そう思ったら
力が抜けてヘナヘナと倒れ込む。

「佐久間。よく頑張ったね。ありがとう。」

阿部ちゃんの腕の中で
ヨシヨシと頭を撫でられる。

すると、涙がポタポタと落ちてきて。

「違う。阿部ちゃんの方が頑張ってた。俺、知ってるもん。」

俺の言葉にウンウンと頷く阿部ちゃん。

「俺達、2人とも頑張ったね。疲れたね」

あ…
俺達、2人で頑張ったんだ。

疲れてたんだ。

そう思ったら張っていた気が
プツンと切れて

一気に疲れが出てくる。

「佐久間。少し休もう」


阿部ちゃんに抱っこされたまま
ソファーに移る。

「阿部ちゃん。合格おめでとう」

俺の言葉は君に届いたかな？

●→←◇

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す