小さなヒーロー ab×sk

幸せの始まり● ページ14

明日は待ちに待ったデビュー日。

何年も何年も願っては消えてきた
俺たちの目標だった場所にやっと立てる日がくる。

嬉しい気持ちと少しだけの恐怖。

大切な仲間も増えた。

守るべきものも増えた。

テレビに出る機会も

雑誌に取り上げられることも

しっかりしないと足元掬われる。

そんな事わかってるのに

どこか地に足が付いてないかの様な

フワフワした気分になる。

「阿部ちゃん」

小さい身体が隣に並んで

ギュッと手を握られる。

少し痛い位の強い力で握られて

「佐久間？」

思わず覗き込む。

小さい身体はガタガタと震えていて

びっくりした。

体調が悪いんじゃないかと心配になるが

佐久間の顔を見て違うと気づく。

きっと、この震えは武者震い。

「阿部ちゃん、やっとここまで来たね。
長かったね」

佐久間の言葉に

今までの自分達の歴史が走馬灯の様に流れる。

長かった。

他のJr.から一歩抜け出したくて
アクロバットを練習して何度も怪我した。

ダンスも人一倍頑張って

先輩たちからはコンサートや舞台に呼ばれる事も多くなって
何度もぶっ倒れた事もある。

後輩達には追い越されるし

正直、俺たちより後輩達の方が優秀で
俺たちが教える意味ってあるのか？って考えた事もあった。

何度も逃げ出したかったし

他の仕事をする自分を考えた事もあった。

だけど、その度に
みんなで話し合って
もう少し、もう少しだけ頑張ろう。

と叶わぬ夢と思いながら
それでも諦められずに手を伸ばしてきた。

「佐久間、もう少しだ。後、少しで俺達は目指したステージに立つ事が出来る。」

そう明日になればあそこに立つ事が出来るんだ。

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