参拾仇 ページ39
条野 side
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「あ」
やってしまった
白い硝子の欠片が、テーブルに零れる
「条野ぉ、どうしたんだ?」
隊長が蒼い顔で訊ねる
空になった底が欠けたカップ底を見つめる
余り感情は表に出ない性質なのに、なぜこうした形でよりによって出てしまうのか
向かいの椅子に腰かけるAさんと鐵腸さんも珍し気に私の手元を見ている
「条野が割るなんて、珍しいのぅ。何だ、何か不服そうな顔をしておるな」
副長がにやにやしながら云う
にやにやする意味が分からないのは置いておいて、手早く硝子を集める
「条野さ・・手・・」
Aさんがさっと白いはんかちを手渡す
「良いです、これくらい」
なんて憂鬱な一日の始まりなんだろう
私はあまりAさんを視界に入れないようにして席を立ち、屑籠に破片を入れる
右耳に、見慣れないイヤーカフ
隣の鐵腸さんがどこか微笑まし気にAさんを見ているのを見ていると、察してしまう
其れだけならまだしも、今朝から「似合ってる」の連発
それに応じでAさんも笑顔で「有難うございます」の連発
まぁいい、イヤーカフが壊れればいい、とか人の不幸は願ったりしないから
今日一日、Aさんを視界から外しておこう
+++
「条野さん」
不意に後ろから声がかかる
空はもう茜色に染まりつつあり、仕事も終わりを迎える頃
「武装探偵社の現在の生存者と、要請の要項の資料、まとめてきました」
そういってほほ笑んで資料を此方に寄越す
きらり、と耳元のイヤーカフが輝く
歯車、時計をモチーフにしたのか、和風な彼女には似合っている
「どうも」
苛立ちか何か、よく分からない感情がぐるりと心を抉る
受け取った刹那、紙の破れる音がした
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物理的 - リクエストです。猟犬メンバーが皆で、お正月を過ごす話を作って欲しいです。 (2018年12月28日 20時) (レス) id: 315b9d08b1 (このIDを非表示/違反報告)
花弁 - リクエスト(ネタ提供)しても良いですか。
条野さんと夢主で祝言を挙げて下さい。
(2018年8月24日 13時) (携帯から) (レス) id: 28273e2d77 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぬゐ。 | 作成日時:2018年8月16日 11時