叶わないはずの恋 Ninomiya (ページ28)

今日:7 hit、昨日:1 hit、合計:30,981 hit

28 留守電（あなたside）ページ28

玄関で私を抱きしめていた和が、満足げに身を離す

和「荷物は俺が部屋まで持ってく、Aは先にリビングで休んでて」

あ「うん、わかった、あったかい飲み物用意しておくね」

そういって和は寝室に、私はリビングに入った

キッチンで飲み物を準備しようとマグカップを出したところで、ふと電話を見ると留守電ボタンが光っていた

あ「珍しい、誰だろう……」

学校も同級生の保護者達も私たちの状況を知っているから、学校からの連絡も連絡網も基本的に私たちが帰宅してから掛かってくる

普段留守電なんてほとんど残されない

不思議に思いながらも留守電を再生する

ﾋﾟｰ

『もしもし？お母さんよ…』

あ「…っ」

幻聴かと思った

『突然なんだけどね？私たち離婚することにしたの…』
『あなたたちのことをどうするかはわからないけど、心構えはしといてね』
『とりあえず来週末あなたたちを訪ねるわ』

ﾋﾟｰ

膝の力が抜けて、床に座り込む

頭が追い付かない…

私たちに対する謝罪も気遣う言葉もなく唐突に始まった無慈悲な報告

私たちをどうするかわからないというのは…どちらも親でいることを放棄しようという考えがあるのだろうか

こんな言葉を淡々と残した母が、数日後ここに来るというのか

呼吸がまともにできない

自分が認識するよりも速く涙が頬を伝い落ちた

和にこれを聞かせてはいけない、と頭では理解しているのに足にも腰にも力が入らない

その時、背後から

今、一番聞きたくて

…一番聞きたくない人の声がした…

和「A…？」