第2楽章 ページ3
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……その後、わたしは気づけば「蝶屋敷」という場所に運ばれていた。
訳が分からないまま、蟲柱だという胡蝶様に手当をしていただき、胡蝶様と共に「お館様」という方にご挨拶をした。
鬼の存在や、鬼殺隊について教えて頂いた。
どうやらあの男の子は、胡蝶様と同じ階級の「時透無一郎」と言うらしい。
しっくりきた。
あの綺麗な硝子玉の様な瞳に、とても似合う名だと思った。
ぼんやりしてて、儚い、いつか消えてしまいそうな、そんな――――。
「さて。……これから君はどうしたい?両親は残念だけどもういない。親戚も隠が探してくれたみたいだけど、どうやらいないみたいだからね」
どうしたい……と言われても。
今だ実感がない。現実だと思えない。でも夢だとも思えない。
あの日の出来事が夢なわけ――――あの殺気が夢なわけないのだ。
チックタック、と。わたしが黙り込んだまま、時は進む。
「もし行く場所がないのであれば、私が蝶屋敷で面倒を見ようと思うのですが、」
「――――あの」
胡蝶様がそう言った瞬間、「それじゃダメ」だと直感が告げていた。
手を挙げて――――こう告げた。
「わたし、も。鬼殺隊に入りたいです。できれば隊員に――体が弱いので、叶わないのであれば隠でも。――――なんでもいいので、役に立ちたい、です」
「あの男の子」の役に。
胡蝶様は「いいんですね?」と念を押してきたが、こくりと頷くともう何も言わなかった。
お館様に「あの男の子の役に立ちたい」と言ったら、快く了承され、
わたしは霞柱・時透無一郎の継子となることに決まった。
――――――
「まず基礎体力」
君は継子となったわたしに、ぶっきらぼうにそう告げた。
「走り込み、屋敷の周り100周」と言われて、目を見開く。
……100周?この屋敷の周りを?
言われるままに走ってみるが、50m走るだけでも息切れがするわたしには無理な話だった。
「君そんなのでよく生きてたね。もういいよ」
「……すみません」
1周で座り込んでしまったわたしに、君はゴミを見るかのように見下ろした。
心無い言葉に、思わず涙が零れそうになる。
でも、泣かないよ。
君は記憶が無いんだって。お館様にそう聞いた。
わざとじゃないんだ。悪意があるわけじゃないんだ。
青い空の喜びも、食べ物の美味しさも、わからない、感じないんだって。
一緒に探すよ、君の記憶。
ありきたりな喜びを感じられるように。
・
霞柱の継子の話。
運動能力はからっきしで、どうして霞柱の継子になれたのかと隊士の間で噂になっているらしい。頭は良く言われたことはすぐに理解できるが、運動神経が無いので活用できない。料理上手で行動が速く、忍耐強いという点から、隠にはピッタリである。
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金平糖 - これってもしかしてYOASOBIの夜に駆けるですか? (2021年8月6日 22時) (レス) id: 91fa929b57 (このIDを非表示/違反報告)
澪凪(プロフ) - YO○SOBIの夜に○けるだよね?それ聞きながら2回目読んだんだよ! (2021年8月5日 11時) (レス) id: 279a2ef6a9 (このIDを非表示/違反報告)
マイン(プロフ) - これって「夜に駆ける」の曲パロ?外れてたらゴメンネ!! (2021年6月19日 22時) (レス) id: ff98810e28 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:楪日織 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kasumi88/
作成日時:2021年6月17日 22時