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「まっそれはともかく…どうだった?玉森さん」
「うん、すごかった。歌もダンスも上手かった」
「お気に召したならよかった。ねっレイちゃん」
「当然」
リンに名前を呼ばれ、そう返事をするレイの表情は自信に満ち溢れていてちょっとかわいいななんて思ってしまう。レイの方を見やると、彼女と視線が合った。
「なに、」
「いや、ごめん。自信満々だなと思って」
思っていたことを素直に口にすると、当たり前でしょ、とレイが返した。
「それくらい練習を重ねたんだもの。練習した分だけ自信につながるのはあなた達も分かってると思うんだけど」
「うん、そうなんだろうなって。二人のパフォーマンス本当にかっこよかったから」
そう微笑みながら返すと、なぜか彼女が訝しげな表情をする。
その表情のまま俺の隣にいた北山に視線を動かすと、北山に問いかける。
「藤ヶ谷さんって天然なの?」
レイの問いに北山は、ああ。と短く返事をすると、その様子を見ていたほかのメンバーやリンが笑い出す。
そんな中、宮っちがそういえばさ、と笑いながら口を開いた。
「二人の衣装めっちゃかわいいね!若干俺たちのMV衣装っぽい」
「ありがと〜MV衣装を参考にデザインしたんだ」
「えっ自分たちでデザインしたの!?」
リンの答えにニカが勢いよく反応する。
「その曲のためだけの衣装を自分たちの手で作るのも、ライブを成功させる要素の一つだからね」
「へ〜!あっ、これからカバーする俺たちの曲用にも作ったりする?」
「そのつもりだよ、まっ、デザインはレイちゃんの仕事だけどね」
そう言いながらリンがレイに笑いかけると、レイは少し居心地悪そうに顔を背け、踵を返してしまう。
「あっレイちゃんどこ行くの」
「帰る。リンだけいれば事足りるでしょ。時間もったいない」
そう言うや否やレイは出口の方に歩いて行く。
その背中を見つめながら、ふとキミとのキセキの歌詞が脳内に浮かんだ。
“ふたつの歴史が ぎこちなく寄り添い 揺れながら”
“運命のドアの先に 広がる新たな世界”
Rose Crownと俺たちは本来なら交わるはずのなかった者同士なんじゃないだろうか。
交わるはずのなかった俺たちの歴史が、今交わってこれから何か新しい世界が見られるのではないか。
遠ざかるレイの背中を見つめながら、俺はそんなことを考える。
これが、俺たちKis-My-Ft2とRose Crownの、いや俺とRayの出会いだった。
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作者名:かしわもち | 作成日時:2023年3月1日 12時