箱庭【二千】

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「横尾さん、コレ味付けなに？ハチミツ？」
「あ、はい。ハニーマスタードで、少し甘めにしました。粒マスタードで、酸味と辛味も足してます。今回はOLさん向けに考えてみたんですけど、どうですか？」
「美味いよ。サンドイッチと、ミニサラダ、野菜ジュースか冷製スープ付きで650円とかならテイクアウトで行けるかな。店で出すならホットサンドにして、ミニデザート・ドリンクつきで980円とか1000円ってとこか。店長はどう思う？」
「そうっすね。650円で、スープ付きならそんなに高く感じないしいいと思います。甘いの苦手な人もいるかもしんないから、辛めの味付けのもあって選べるといいかも」

3人でああだこうだと話しながら、詳細を詰めていく。
月ごとに変わるメニュー目当てのお客さんも増えて、オーナーも嬉しそうだ。
後輩だという横尾さんを新しい料理人だと紹介されてからもうすぐ3カ月になる。
勤務時間はランチタイムまでってことで、俺達のまかないとカフェタイムのスイーツを仕込んだら帰っちゃうけど、彼が来てから、これまで夜しか店にいなかったオーナーはランチタイムも頻繁に店に顔を出すようになった。確実にまかない目当てだろう。

「夏場に向けてサルサでもいいかもしれないですね。オーナー、冷製スープの試作も合わせて、明日にでも作ってみます」
「頼むよ。明日も来るから」
「えー、オーナー、また来るの？俺と横尾さんにまかせてくれてもいいんですけど」
「おい、二階堂、常々言おうと思ってたけどお前オーナー様に対する態度なってないぞ！」
「ふふ、確かに、店長がいるから店は大丈夫ですよ」
「横尾さんまで！ほら、二階堂が俺をないがしろにするから横尾さんまで悪影響うけてるじゃねぇか！」
「あー、はいはい。申し訳ございませんでした〜！以後気をつけますぅ〜」

オーナーとは俺がガキンチョの頃からの腐れ縁だから、ついつい減らず口を叩いてしまう。
店長がオーナーに暴言吐いてる光景は、端から見ると不思議みたいだ。

「ったく。あまりにひどいと給料下げるぞ」

ぶつくさ言いながら、新店舗の内装の打ち合わせがあるからとオーナーは店を出て行った。
時計の針は3時を示そうとしている。
そろそろ、スイーツ目当てのお客さまが増えてくる。
閉店時間の21時まではまだ長い。

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