箱庭【二千】

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早めに閉店作業を終えて、新店舗に急ぐ。
オーナーに電話かけたら「盛り上がってるぞ」と遠回しに早く来いとのプレッシャー。
歩いて10分くらいだから、自転車を転がせばすぐだ。

「お疲れ様でーす」
「おぉ、二カー、待ってたよ〜」
「お待たせ、賑わってるじゃん」
「おかげさまでね。じゃ、早速頼んでいい？」
「おけ」

するりと店内に入れば、店長の玉森がさり気なく声をかけてくる。
バックスペースでベストと蝶タイ、エプロンを身に着けて、フロアへ。
バーだからってことで、今日はいつものエプロンに加えてベストも着る。
久々に着るバーテン衣装になんだか身が引き締まる感じだ。
オープニングだから、店の常連さんやオーナーの知り合いも多い。
挨拶を交わしながら、空きグラスを下げ、追加のドリンクを聞いていく。
バーカウンターでは宮田がシェーカーを振っている。
スツールに腰掛けているのは、千賀だろうか。オーナーと何か話している。

「スプモーニとホワイトレディ願いします」

カウンターの宮田に伝えると、にこやかにうなづいて、棚からボトルを降ろしてる。

「ニカ、思ったより早かったな。ちょうど千賀さんとイベントのこと話してたとこだ」
「そうなんすね。来てくれたんだな。ありがとう」
「あ、あぁ。こっちこそ、誘ってくれてありがとう。実際に来て見るとイメージしやすいよ」

出来上がるのを待つ間、オーナーと千賀と話す。
千賀はいつもとちがう店だからだろうか。なんだかよそゆきの表情だ。
どこか緊張しているように見える。

「スプモーニとホワイトレディ、お待たせしました」

宮田の柔らかい声とともにカウンターにカクテルが出される。

「お、これどなたのオーダー？粋なことするねぇ」
「亀梨様ですよ。ベタだけどなっておっしゃってました」
「そっか。俺が持ってって話してくるわ。千賀さん、ゆっくりしていってくださいね」

オーナーが嬉しそうにカクテルを載せたトレイを持ってフロアのお客様のもとへ。

「粋なことって？」
「あぁ、カクテルの色、見て」

不思議そうに尋ねる千賀に、カクテルを見るように促す。
赤のスプモーニと、白のホワイトレディ。
新店舗のオープンということで、紅白になるようにオーダーしてくれたんだろう。

「あぁ！なるほどね。そういうことかぁ。めでたいことだもんなぁ」
「ふふ、そういうこと」

しきりに納得して感心してる千賀は好奇心旺盛な子供みたいで、なんだかあの頃の千賀を見てるみたいだ。

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