箱庭【二千】

11 K ページ11

「カクテルパーティか、それはいいな。ニカ、他店だけどサングリアとパンチ頼めるか？バーカウンターだけでは捌けないだろうから」
「はい。赤と白、それからノンアルのパンチで考えます。宮田にはシェーカー振るのに専念してもらって。何ならヘルプに行きます」
「助かる。オープン早々店員２人ではイベントはきついからな。お願いしようと思ってた」

新店舗のオープン前にイベント利用で声がかかるのはありがたい。
朝イチのニカのメールで、オープンを控えた新店舗でのイベント利用の問い合わせがあったと聞いて、賄い昼食兼ねてニカから詳細を聞く。
千賀くんとイベント担当の人に新店舗のオープニングパーティに来てもらって、様子をみてもらうのもありだな。
フードは、横尾さんにケータリング出来るフィンガーフードを頼もうか。
新店舗のオープニングパーティがこれからの新店舗の方向性を決めるものにもなる。

「玉森と宮田にも話しとくわ。週明けにでもスタッフ皆で打ち合わせしよう」
「そうっすね。こっちの営業時間と予約の兼ね合いもあるし、こっちを早めに閉めるなら告知しとかないと」

PCでスケジュールを見ながらニカが言う。
２５才になったクソガキは、もう立派な店長だ。
生意気そうに笑うのに(というか、実際クソ生意気だ)ふと見せるどこか哀しげな瞳がアンバランスで大人の男になりかけてるんだろうな、なんて考える。
誰か好きな人でもいるのだろうか。
しみじみと、幼なじみの成長を感じてしまう。
俺も３０才だもんな。ニカが大人になってるってことは、俺はもっと大人になってるってことか。

「…、なんか頼もしくなったな。ニカ」
「え？何いってんの、気持ちわるっ」

しみじみ呟いた褒め言葉を一言でバッサリぶった切り、怪訝な表情で俺を見る青年は、やっぱりクソガキだ。

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