選手としてみた、されてみた龍神編【短編集】

試合後 Tomohiro.O ページ29

パリ行きを決めたスロベニア戦後、まだ喜びの余韻に浸る日本代表のロッカールーム。

水をひと口喉に通すと、後ろからいきなり何やら重いものが俺に覆い被さってきた。


藍《へーい、ともひろおがわぁ〜》

「なんだ、藍か」

藍《なんだとはなんだ。ねぇそれよりさ、今日Aさん来てましたね》

「えっ？」


藍の言う"Aさん"とは、俺の彼女のことである。
今朝本人が今日は夕方から仕事で来れないと言っていたはずなのに、どうしてここに···？



「今日は来てるはずないんだけど···」

藍《え？でも俺さっきAさんと通路で喋ってきたよ？》

「えぇ···？」


すると、突然バッグの中でスマホが振動した。
通知欄を見てみると、Aから何通かLINEが届いていた。

俺を収めた写真や動画が送られてきていて、その最後に短いメッセージが添えられていた。



「今日もかっこよかったよ、か···」

藍《なーにニヤニヤしてんの》

「ねぇ藍、こんなのわざわざ送ってきてさ、うちのA可愛いと思わない？」

藍《うん、とっても》


藍はそう言うと俺から離れて、後ろを振り返って周りをキョロキョロと見回しはじめた。



藍《ねえ祐希さん祐希さん、ちょっとこれ見て！》


藍は祐希さんの腕を引っ張って引き止めると、俺のスマホ画面を指さした。


藍《さっき俺にこれ見せながらデレデレしてきたんすよ》

祐《あー···、それはやってるわ。動画とか撮ってたの？》

藍《いや、撮ってないっす。あーもうさっきの動画撮っとけば良かったマジで》

「良くないわ、お前それ撮ってたら絶対Aに見せてただろ」

藍《へへ、あたり。てことでトモさん、撮るんでもう1回さっきのやってください》

「やだ」

祐《藍、それ撮ったら俺にも送って》

藍《了解っす》

「おい」



Take2の要望を断りまくってなんとか撮られるのは免れたが、後日西田有志とかいうヤツに隠し撮りされていたことが発覚し、結局Aの目に触れてしまった。

＿ Tomohiro.Y→←喧嘩 Kentaro.T

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す