73話 それでもわたしは ページ29
イヤだと、Aはそう言った。
恐る恐ると言った口調ではあったが、普段俺にしか自分の意見を言わない、いやむしろ、俺の前でも自分の意見を隠している所があるAが、初対面である坂木に反抗したのだ。
なんでそこまで俺にこだわる。
幼馴染で家が隣だからと言っても、俺達は男と女で、2歳も年が離れている。
俺は女じゃないから、Aの相手をキチンと出来るわけじゃない。
なぜ?俺はずっと気になっていた。
「はあ?いや別にアンタの意見とか聞いてないし」
「あやねちゃんが、こうやってわざわざ言ってあげてるんだよ?意味分かってるー?」
『わ、わかってますよ。だから、イヤって言って...ます...』
「アンタただの幼なじみなだけじゃん!笠松くんは別にアンタのものじゃないし!」
坂木たちはAの態度が気に食わないのか、段々と声が大きくなっていき、荒い口調になってきた。
今にもAに殴りかかりそうな勢いだ。
てか、俺何でこうやって見てるだけなんだよ。今すぐにでも飛び出して、あの言い合いを止めればいいだろ。
なんで足が動かないんだよ。
ビビってんなよ俺!Aが頑張ってんだぞ...!
必死で足を動かそうとしても、俺の足は動き出すことはなかった。
「はー...もうつかれてきた。とにかくさ、アンタが付きまとうのやめてくれたら、すぐに帰してあげるからさ」
『い、イヤです...』
「だーかーらー!」
『だ、だって!わたしも、ゆきちゃんのこと好きだから...!』
アイツが俺に関わってくる理由。
それは至って簡単な理由だったようだ。
俺が好き。
それだけの理由で、アイツは俺に関わっていた。
「それを!あきらめろって言ってんの!」
『あなたたちにそんな事言われても!それでもわたしはゆきちゃんのことあきらめないです...!』
初めて坂木の顔を見て自分の意思を告げたA。
そのAの顔を見て、坂木の表情は一瞬にして変わった。
坂木はバッと腕をAの前に出した。
「うっぜえんだよ!そうゆーの!!!」
ドンっと押される音がした。
見ると、Aが後ろに倒れていく。俺の血の気が引いていく。そして、初めて見えているものがスローモーションに見える経験をした。
なんで坂木がこの場所を選んだのか。
なんで階段の前という場所なのか。
なんでAの後ろに階段をくるように立ったのか。
Aは階段下に落ちていく。
そんなAを見て、やっと俺の足は動いたのだった。
「A!!!」
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笠松もみじ(プロフ) - シャンプーさん» 作品を読んでいただきありがとうございます!面白いと言ってもらえる展開を書いていきたいと思いますので、これからもよろしくお願いします! (2018年1月26日 10時) (レス) id: a42261d885 (このIDを非表示/違反報告)
シャンプー - 小説面白いです!初めから一気に読ませて頂きました。次の展開が楽しみです☆更新待ってます(≧ω≦) (2018年1月24日 21時) (携帯から) (レス) id: 170aaa5bac (このIDを非表示/違反報告)
笠松もみじ(プロフ) - 氷食症さん» 面白いと言っていただけて幸いです!更新頑張らせていただきます! (2018年1月1日 20時) (レス) id: a42261d885 (このIDを非表示/違反報告)
氷食症(プロフ) - めっちゃ面白いです!!!更新お待ちしております! (2018年1月1日 17時) (レス) id: 4abaca475b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぴよ子 | 作成日時:2017年11月12日 15時