六輪 ページ7
呆然と立ち尽くす私の耳に、隊士の方々の悲鳴が聞こえてくる。
思わず目をぎゅっと瞑り、耳を塞いで蹲る。
心臓は激しく脈を打っている。
(……怖い)
誰か……。
ふっと気配を感じて目を開けると、怖い顔をした隊士の人が私に刀を振り上げていた。
「っ……」
(逃げなくちゃ)
そう思った私は、必死に隊士の人から逃げようと走り出した。
足をもつれさせながらも、私は何とか走る。
しかし、私はふと眼前に広がった景色に足を止めてしまった。
だって、そこには……。
「っ、あぁ……」
血塗れになったお兄ちゃん、十にぃ、そして……そーくんが、倒れていた。
あまりのショックに、膝から力が抜け、私はぺたりとその場に座り込む。
「っ、そーくん……っ?!」
何とか這うようにして進み、私は一番近くにいたそーくんの頬に触れ、その頬の冷たさにぞくりとする。
(……まさか……)
死 ん で る の ?
何が起こっているのかを受け入れきれず、脳がキャパオーバーだと叫び出したその時、後ろからジャリっと土を踏む音が聞こえ、私はハッとして振り返る。
そこには、刀を持ったままふらふらと近づいてきている隊士の人がいた。
「あ……」
すぐそこに死が迫っているのにも関わらず、私は動けずただただ近づいて来ている隊士の人を見ていた。
私の前に立ったその人はにやりと笑い、そして。
私に刀を……。
.
「っ……!!!」
ばっと起き上がり、そこで私は目を覚ました。
荒い息を落ち着けようと深呼吸をしてみるけれど、なかなか呼吸は落ち着いてくれない。
びっしょりと汗をかいていて、寝間着が肌にぴっとりと張り付いている。
「っ……」
あれは、夢だと分かっている。
……分かっているのに。
(どうして、こんなにも怖いの……)
今すぐ誰かの温もりに触れないと、壊れてしまいそうで。
私はゆっくりと立ち上がり、荒い息をついたまま廊下へと出た。
外は、先程までの星空が嘘のように土砂降りの雨が降っていた。
.
こんなパニック状態で脳が正常に働くわけもなく、私は行く宛を決めないまま壁伝いに廊下を歩いていた。
脳のキャパシティはとっくに限界を迎えていたらしく、訳も分からず涙が出てきた。
(誰か……誰か……)
ざあざあと振り続ける雨のせいで、どんどん体温が奪われていく。
寒さで指先がじんとしてきたころ。
「……A?」
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赤羽@美羽(プロフ) - サクラさん» ありがとうございます!そう言っていただけるととても嬉しいです!これからもよろしくお願いします♪ (2020年3月13日 9時) (レス) id: 8b3b438a89 (このIDを非表示/違反報告)
サクラ(プロフ) - めっちゃ面白いです!さっそくお気に入り登録しちゃいました!更新楽しみにしてます、頑張ってください! (2020年3月12日 14時) (レス) id: 319352fe0b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:赤羽@美羽 | 作成日時:2019年9月11日 7時