三十二輪 ページ47
特に何かがなくても、そーくんは私に電話をくれて、何気ない近況報告をしてくれた。
『どうでィ、そっちは。
何か変わったこととかあったかィ?』
「ううん。何もないよ。
凄く平和」
『そうかィ。ならよかった』
「そーくんの方は、何かあった?」
『んー……』
そーくんが悩むそぶりを見せる間、私は屈み、足元に擦り寄ってきたゆきの頭を撫でる。
『あァ、そういやァ……この前の非番の日、近藤さんが姉御にガチの告白しに行ったはずなのに、どういうわけか旦那んとこの下のスナックで働いてる天人連れて帰ってきた』
「……え……っ、と?」
(ツッコミが追いつかない……!)
そういえば、神楽ちゃんがスナックお登勢というお店があるって言ってたなぁ。
確か……万事屋の下にあるんだっけ?
「そ、そうなんだ……?
ど、どうしてそんなことになったんだろう……」
『さァなァ』
『面白ェだろ?』とそーくんが楽しそうに言うので、私も思わず笑みを溢す。
「うん」
『まァ、あの後も懲りずに姉御のことストーキングしてるし、何の問題もなかったんじゃね?』
「そうなんだ……」
お兄ちゃんも凄いなぁ。
あんなに無碍にされても、まだお妙さんのことが好きだなんて。
でも、お妙さんはとても素敵な方だし、しょうがないのかな。
すると、電話口の向こうから誰かが怒っている声が聞こえてきた。
『おいコラ総悟!
てめェ何サボってやがる!
てめェ今見回りの時間だろーが!』
『あっ、ヤベっ、見つかっちまった』
「そーくん、お仕事の途中だったの?
ダメだよ、ちゃんとお仕事はしないと」
そう軽く注意すると、そーくんは拗ねたような声を漏らす。
しかし、『へいへい』と言い、『土方さんがうるせェから俺ァ仕事に戻る。またな、A』と言った。
「うん。電話ありがとう、嬉しかった。またね。
お仕事頑張って。それじゃあ」
そう言い終えた後、そーくんが電話を切ったのを確認してから私も受話器を置く。
もう一度屈み、私はゆきに話しかける。
「今日はいい日だね。
そーくんから電話が来るなんて」
ゆきはその言葉に応えるように、にあ、と小さく鳴いてくれた。
.
それからまた数日後。
昨日、お兄ちゃんのお母さんから電話がかかってきた私は、近藤家に向かっていた。
(急で凄く驚いちゃったけど……「久しぶりに会いたい」って言われた時は、嬉しかったな)
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赤羽@美羽(プロフ) - サクラさん» ありがとうございます!そう言っていただけるととても嬉しいです!これからもよろしくお願いします♪ (2020年3月13日 9時) (レス) id: 8b3b438a89 (このIDを非表示/違反報告)
サクラ(プロフ) - めっちゃ面白いです!さっそくお気に入り登録しちゃいました!更新楽しみにしてます、頑張ってください! (2020年3月12日 14時) (レス) id: 319352fe0b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:赤羽@美羽 | 作成日時:2019年9月11日 7時