二十輪 ページ31
ミツバ姉は郵便受けの中にそーくんからの手紙を見つけると、普段より声のトーンを数段高くして、本当に嬉しそうに私に報告をしてくれた。
『Aちゃん！
総ちゃんからの手紙が来たわ！」
ミツバ姉の声をもう既に懐かしいものとして思い出していると、そーくんが消え入りそうなほど小さな声で呟いた。
「……もっと……もっと、たくさん……姉上が元気なうちに、帰ってくるべきだった……」
「っ……」
確かに、そーくんは江戸に出た次の年の年末年始以来武州に帰って来ていなかった。
でも、それは江戸で真選組が認められているとともに、そーくんの実力も認められて行ったということで。
……ミツバ姉は、喜んでたよ。
そーくんの実力を、そーくんを、たくさんの人に認められたということを。
そう言いたかった。
けれど、そーくんが望んでいるのはそんな言葉じゃない気がして。
ズビッ、と鼻を啜る音が聞こえ、私は我に帰って立ち上がる。
……きっとそーくんは、私に泣き顔を見られたくないと思うから。
「そーくん。私、食材の買い出しに行ってくるね」
何も、返事は返ってこなかった。
そーくんをこのまま一人残して行って本当にいいものか一瞬悩んだけれど、結局私はそのまま静かに家を出た。
.
食材の買い出しを終え、私はそーくんのことを考えながら帰路についていた。
(結局、そーくんを置いて来てしまったけれど……大丈夫だったかな……)
不安に眉を寄せながら「ただいま……」と玄関の戸を開く。
すると……。
「おーA。おかえり」
「え」
普段と何も変わらない様子のそーくんが出迎えてくれて、私の方が戸惑ってしまう。
そーくんにかける言葉を探して玄関に突っ立ったままの私の手から買い物バッグを取り、そーくんはそのまま流れるように私の手を取る。
「っ……」
そーくんの大きい手が私の手をすっぽりと包み込んでしまっている。
触れているそーくんの手が、何となく普段より熱い気がして。
それに比例するように私の頬も熱くなっていく。
「いつまでもこんなトコで突っ立ってんじゃねェよ」
「え、あ、うん……！」
(……ほっぺ赤いの、バレてないかな……)
そーくんに手を引かれて台所まで向かう途中、ドキドキしながらもちらりとそーくんを盗み見る。
(さっきまでの様子が嘘みたい)
もう大丈夫なのかどうか訊きたかったけれど、わざわざ掘り返す話題でもないと思い直し、私はそのまま口をつぐんだ。
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赤羽@美羽(プロフ) - サクラさん» ありがとうございます！そう言っていただけるととても嬉しいです！これからもよろしくお願いします♪ (2020年3月13日 9時) (
レス) id: 8b3b438a89 (このIDを非表示/違反報告)
サクラ(プロフ) - めっちゃ面白いです！さっそくお気に入り登録しちゃいました！更新楽しみにしてます、頑張ってください！ (2020年3月12日 14時) (レス) id: 319352fe0b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：赤羽@美羽 | 作成日時：2019年9月11日 7時
