三十四輪 ページ49
あはは……、と返す言葉を探しながら苦笑をこぼしていると……。
「ホントのことだろうが。
こんなご時世、あの道場を形ばかりでも保っていくのがどれだけ大変だと思ってる」
スパーン、と襖が開け放たれて、おじちゃんがやって来た。
「おじちゃん!久しぶり!」
やっぱりさっき道場の方でしていた声はおじちゃんだったようで、おじちゃんは道着姿でタオルで汗を拭いていた。
何だかその姿はどこかお兄ちゃんと似ていた。
「いいじゃないかい、少しくらい贅沢したって」
「ダメだ」
「何よ〜ケチね」
むすっとしてしまったおばちゃんに代わって、今度はおじちゃんが口を開く。
「久しぶりだな、Aちゃん。
一体いつ帰って来たんだ?」
そのおじちゃんの言葉を聞いて、おばちゃんも「そうよ!いつ帰って来たの?」と食いついてくる。
「ついこの間……二週間くらい前かな」
「二週間も前!?
やだわもう……もっと早く会いに来てくれれば良かったのに」
「ご……ごめんね。
ちょっと色々あって……」
(そーくんも一緒だったし……そこまで頭が回らなかった)
二人きりで過ごす時間が、あまりにも楽しくて。
「まァ、AちゃんにはAちゃんの都合があったのだろう。
……ところで、江戸はどうだった?」
「とっても素敵なところだったよ。
たくさんの人がいて……皆優しかった」
「そう。それはよかったわね」
笑顔で言ってくれるおばちゃんに笑顔を返しながら続ける。
「お兄ちゃんたちもね、凄かったよ。
とっても強くなってた」
「あら」
おばちゃんはそれを聞いてニヤッと笑うと、肘で隣のおじちゃんを突く。
「よかったじゃな〜い。
勲、ちゃんとやっるみたいで」
「……」
私の言葉に、おじちゃんは少し安心したような笑顔を見せてくれた。
.
それからまた色々な話をして、お昼ご飯と夜ご飯をご馳走になった私は暗くなりすぎないうちに帰路についていた。
(久しぶりにお話できて、楽しかったなぁ)
おじちゃんもおばちゃんも全然変わってなくて、安心した。
この親にしてこの子あり、の代名詞のような二人を思い出し、私はふと足を止める。
(……お母さんの記憶は薄らあるけど……お父さんって、どんな人だったんだろう)
いつか知れる日が来たらいいな。
そう思いながら、私はまた家へと足を進めた。
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赤羽@美羽(プロフ) - サクラさん» ありがとうございます!そう言っていただけるととても嬉しいです!これからもよろしくお願いします♪ (2020年3月13日 9時) (レス) id: 8b3b438a89 (このIDを非表示/違反報告)
サクラ(プロフ) - めっちゃ面白いです!さっそくお気に入り登録しちゃいました!更新楽しみにしてます、頑張ってください! (2020年3月12日 14時) (レス) id: 319352fe0b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:赤羽@美羽 | 作成日時:2019年9月11日 7時