二十四輪 ページ31
何と呼びかけても応えてくれないそーくんに、話しかけても意味がないと判断した私は、黙ってそーくんについていく。
(……どうして、何も言ってくれないの?)
少しの恐怖を感じ、私は微かに眉を寄せた。
少し小走りになりならもそーくんについていき、私たちはネオン輝くかぶき町を抜ける。
今まで周りにたくさん人がいたからか、気温が数度低くなった気がする。
感じる気温差にぶるりと少し身震いをすると、そーくんは路地裏に私を押し込み、手首を掴んでそのまま私の身体を民家の塀に押し付けた。
「っ!」
いきなりの衝撃に息がつまる。
「そー、くん……?」
(……やっぱり、怒ってる)
少しの恐怖を感じて問いかけると、そーくんの顔がグッと近づく。
「……こんな夜遅くに出歩くことが、どういうことか分かってんのか」
「……え」
予期していなかった言葉を投げかけられ、返す言葉に迷っていると、そーくんは手首を掴む手の力を強める。
「っ……そーくん、痛い……」
あまりの力強さに顔を顰めながら呟くけれど、そーくんは聞く耳を持ってくれない。
「A。かぶき調が何て呼ばれてるか知ってるかィ?」
「……知らない」
素直に首を振ると、そーくんは目を僅かに細めた。
「……“夜の街”」
「……え」
……“夜の街”。
初めて聞く単語。
「夜の街って呼ばれてんでィ」
知らなかったろ?と訊かれ、私は素直に頷く。
すると、そーくんははぁ、とため息をつき、言葉を続けた。
「さっきかぶき町を歩いてた時、妙に着飾った奴らがいたろ?」
「え、うん……」
確かに、夜のかぶき町は粧し込んだ人が多かった。
男の人はきっちりとスーツを着ていたし、女の人からは強くお化粧の匂いがした。
「その中に、何人かAに声をかけようとしてた奴らがいたろ?」
「え、う、うん……」
確かに、男の人の中には私に声をかけようとしていた人もいた。
けれど、そーくんがどんどん早足で歩いて行ってしまうから、応じる間もなく私たちは離れてしまった。
理由があれども、言葉を返せなかったことに少し罪悪感を感じている。
「例えば」
そーくんの顔がグッと近づき、私は息を飲む。
紅い瞳がとても綺麗で、思わず私は目を逸らしたくなる。
「そいつらにこういうふうに押さえつけられたら、テメーは逃げられんのかィ?」
なぁ?と吐息がかかるほど近距離で囁かれ、緊張で身体が強張る。
「っ、や……」
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赤羽@美羽(プロフ) - あやさん» いつも読んでくださりありがとうございます!そういうことを言っていただけると、とても嬉しいです!創作意欲につながります!更新頑張ります! (2019年6月20日 7時) (レス) id: 8b3b438a89 (このIDを非表示/違反報告)
あや(プロフ) - お久しぶりです!更新ありがとうございます!いつも楽しく読ませていただいてます。土方さんと一緒にいる主人公ちゃんを見て怒る沖田さん。主人公ちゃんに優しい沖田さん好きなのでこれからも楽しみです! (2019年6月19日 19時) (レス) id: 98522d48ea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:赤羽@美羽 | 作成日時:2019年3月28日 16時