十四輪 ページ19
「大体、一々神様だ何だ言ってたら俺はこの世にいやしねェだろ。
何人の恨み辛み背負ってると思ってんでィ」
「ぁ……」
……確かに、そうだ。
私は、そーくんたちが“奪われる側”だとしか考えていなかったけれど、命の“やり取り”なのだから、そーくんたちが奪ってきた命だってあるはず。
確かに、神様や幽霊などを信じていたら、やっていけないのかもしれない。
だけれど。
だけれど、そーくんにそういうことを言わせたかった訳ではなかった。
さっきのそーくんの言葉を聞いた途端、心臓を掴まれたような感じがして、苦しくなった。
(……あんなことを、言わせるつもりじゃなかったのに)
黙ってしまった私にため息をついたそーくんは、私の後ろを通り過ぎざまに私の髪をくしゃっと撫でて言った。
「ンな顔すんじゃねェやい。
気になんかしてねェよ。
とにかく、心配しなくても、俺たちは絶対ェ大丈夫でィ。
信じな」
「っ……」
……全部、見抜かれた。
そーくんの言葉に、「失礼なことを聞いてしまった」と落ち込んでいた私の心はあたためられる。
少し驚きながらも、私は、小さい小さい声で、「うん」と頷いた。
(……でも)
私は、心の中でそっと呟く。
(心の中で、密かに心配していることくらい、いいよね)
.
その日の夜。
やることを全て終え、私は寝間着姿でお兄ちゃんの部屋を訪れていた。
「お兄ちゃん、入ってもいい?」
お兄ちゃんの部屋の前から声をかけると、「ん?Aちゃん?」と不思議がるような声がして、「あぁ、良いよ、入っておいで!」と言われたので、私はお兄ちゃんの部屋に入る。
お兄ちゃんの部屋は、“局長”という役職に相応しいような、私の部屋より何回りか広い部屋だった。
「どうしたんだ?Aちゃん」
「えっと……」
どうやって切り出そうか考えながら、私はお兄ちゃんの前に腰を下ろす。
「……あのね、お兄ちゃん。
お願いかあるの」
「?」
「あのね、私、ここで何かお手伝いをしたくて……考えたの。
それでね……私に、ご飯を作るお手伝いをさせて欲しいの」
そう言い切ると、お兄ちゃんが驚いたような顔をした。
「ここで、働きたいのか?」
「あ、ううん。
お金が欲しいとか、そういうのじゃなくて……。
私、やっぱり、ただで住まわせて貰うのは、何だか申し訳なくって」
「ううん……」
と暫く考え込んでいたお兄ちゃんが、顔を上げて言った。
「あぁ、分かった」
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赤羽@美羽(プロフ) - あやさん» いつも読んでくださりありがとうございます!そういうことを言っていただけると、とても嬉しいです!創作意欲につながります!更新頑張ります! (2019年6月20日 7時) (レス) id: 8b3b438a89 (このIDを非表示/違反報告)
あや(プロフ) - お久しぶりです!更新ありがとうございます!いつも楽しく読ませていただいてます。土方さんと一緒にいる主人公ちゃんを見て怒る沖田さん。主人公ちゃんに優しい沖田さん好きなのでこれからも楽しみです! (2019年6月19日 19時) (レス) id: 98522d48ea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:赤羽@美羽 | 作成日時:2019年3月28日 16時