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「ちょっとコイツ頼む。俺は近藤さん回収してくる」と十にぃが言った次の瞬間、視界がパッと開ける。
「偉そうに命令してんじゃねェぞ土方ァ。
土方の癖にー」
「るっせぇ!俺は上司だ!」
少しは敬いやがれ!と叫びながら、十にぃは言ってしまった。
「やれやれ、これだから怒りんぼの土方さんは困るんでィ」
こちらもまた私服姿のそーくんは、肩をすくめると、丁度お兄ちゃん達がいる方を隠すように私の前に座り、言った。
「今日の飯はAが作ったのかィ?」
「うん」
私は頷く。
「流石に量が多くって作りきれなかったから、おばさま達にも手伝ってもらったけど……」
おばさま達、というのは、普段屯所で食事を作ってくださっている方たちのこと。
仕事とは別のこの宴のご飯の準備を手伝ってもらい、本当に感謝している。
(今度、お礼をしよう)
そう思いながら、ふと気になったことを訊く。
「……美味しかった……?」
「あ?」とそーくんは一瞬お酒を飲んでいた手を止め、私を見る。
正面から見つめられ、何となく気恥ずかしさを感じていると、そーくんは口を開く。
「まぁ、及第点」
「きゅ、及第点……」
低い点数に少し落ち込んでいると、そーくんはふっと吹き出す。
いきなりのそーくんの言動に驚いていると、そーくんは面白がるように言った。
「やっぱお前、驚くほど素直だねィ」
そして一頻り笑い終わると、そーくんはふと優しい目をして言った。
「嘘、めっちゃ美味かった」
「っ……」
普段言われない言葉に頰を染めていると、「まぁ、当たり前でィ」と声がする。
「姉上がAに教えたんだろィ?
だったら美味いに決まってらァ」
逆にそれで不味いヤツがいたらビックリすらァ、とそーくんは再びお酒を煽る。
その様子を見て、私は思わず言った。
「そーくん、あまり呑みすぎない方がいいんじゃないかな……?
私達、未成年だし……」
その言葉に、お前は母ちゃんか、と言いながら、そーくんは最後に一杯呑み、素直に、抱えていたお酒の瓶と盃を置く。
「あー、何か眠くなってきた」
そーくんは欠伸をする。
「A、膝貸せ」
「え、ちょっ、そーくん?」
驚く私を他所に、そーくんはごろりと座っていたシートの上に横になり、私の膝に頭を乗せる。
「そーくん……っ」
思ったよりもそーくんとの顔が近いことを意識してしまいながらも呼びかけるけれど、お酒が入っていたそーくんは、すぐに眠ってしまった。
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赤羽@美羽(プロフ) - あやさん» いつも読んでくださりありがとうございます!そういうことを言っていただけると、とても嬉しいです!創作意欲につながります!更新頑張ります! (2019年6月20日 7時) (レス) id: 8b3b438a89 (このIDを非表示/違反報告)
あや(プロフ) - お久しぶりです!更新ありがとうございます!いつも楽しく読ませていただいてます。土方さんと一緒にいる主人公ちゃんを見て怒る沖田さん。主人公ちゃんに優しい沖田さん好きなのでこれからも楽しみです! (2019年6月19日 19時) (レス) id: 98522d48ea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:赤羽@美羽 | 作成日時:2019年3月28日 16時