一輪 ページ2
しばらくすると、山崎さんが薬を持って部屋を訪れてくれた。
「っ……山崎、さん……」
咳をしながら声を出すと、「あ!無理して声出さなくていいから……!」と慌てて言われたので、素直に口を閉じる。
「じゃあ、これ。薬と水」
そう言って山崎さんは私の枕元にお盆に乗った薬と水を置いてくれた。
「ありがとうございます」
「いやいや、こんなの全然気にすることじゃないよ」
私がお礼を言うと、山崎さんは笑顔で首を振って言ってくれた。
そして、ぼそりと呟く。
「いつもの副長達の無茶振りに比べればこんなの全然……」
「……」
十にぃたちは、山崎さんに一体どんな無茶振りを言いつけているのだろうか。
というか、十にぃたちは屯所でそんなにやりたい放題なのか。
山崎さんを気の毒に思いながら、私が見たことのない十にぃ達の様子に想いを馳せていると、襖がスッと開く。
視線を向けると、そーくんが鍋と本を手にして立っていた。
「あ、隊長」
「山崎、もういい。仕事に戻れ」
「へいへい」
山崎さんは呆れたような声音で返事をして立ち上がると、去り際に、
「屯所ってうるさいからしっかり休めるか分からないけど……安静にね」
と言ってくれたので、「はい」と頷いた。
山崎さんが出て行ってしまうと、部屋には私とそーくんの2人きりになってしまう。
そーくんはさっきと同じように私の布団の近くに腰を下ろすと、
「飯持ってきたけど……食えるかィ?」
と、鍋の蓋を開けながら言う。
「……それは?」
「粥。食堂のおばちゃん達に作ってもらった」
顔を上げたそーくんに、「食うの?食わないの?」と改めて聞かれてしまい、慌てて「食べる」と答える。
そーくんに手を借りながら身体を起こし、そーくんがよそってくれたお粥を受け取る。
湯気が出ているお粥に少し息を吹きかけ、冷ましてから口に入れる。
「あ、美味しい」
(たまご粥かな)
口の中に淡い甘みが広がり、思わず頰が緩む。
「そうかィ」
よかったな、と言って、そーくんは私の隣で本を広げる。
ふと気になってその本の題名を読み上げる。
「『絶対成功!マル秘呪い全集』?
……そーくん。何コレ」
「見て分かんねェのかィ。
土方さんを呪い殺す為の本でィ」
「……」
え、いやいや、え?
いやまぁ確かに、昔からそーくんは十にぃをあまりよく思っていないようではあったけれども。
(えぇ……)
「まぁ、成功したことねェんだけどな」
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赤羽@美羽(プロフ) - あやさん» いつも読んでくださりありがとうございます!そういうことを言っていただけると、とても嬉しいです!創作意欲につながります!更新頑張ります! (2019年6月20日 7時) (レス) id: 8b3b438a89 (このIDを非表示/違反報告)
あや(プロフ) - お久しぶりです!更新ありがとうございます!いつも楽しく読ませていただいてます。土方さんと一緒にいる主人公ちゃんを見て怒る沖田さん。主人公ちゃんに優しい沖田さん好きなのでこれからも楽しみです! (2019年6月19日 19時) (レス) id: 98522d48ea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:赤羽@美羽 | 作成日時:2019年3月28日 16時