八輪 ページ9
「遅ェ」
そーくんはそう言ったものの、満更でもなさそうな顔をしていて、その様子に私は頰を緩める。
そうしていると、十にぃが反対側から言った。
「今日は悪かったな、部屋に行ってやれなくて」
本当に申し訳なさそうにしている十にぃに、私は首を振って言った。
「ううん、気にしないで。
お仕事、忙しかったんでしょ?」
「……あァ、まァ……な。
どうだ?熱の方は。
微熱だとは聞いたんだが……」
「うん、だいぶ良くなったみたい。
身体が凄く軽い」
「そうか」
私の言葉を聞いて十にぃは頰をほんの少しだけ緩めると、
すると、次は目の前の席にお兄ちゃんがやってきた。
「Aちゃん、風邪を引いたんだって?!
もう大丈夫なのかい?」
「うん、大丈夫だよ。
ありがとう、お兄ちゃん」
笑って答えると、お兄ちゃんは私の頭を撫でながら、「ごめんなァ、見舞いに行ってやれなくて」と言う。
(……どうして皆、私の頭を撫でたがるんだろう)
坂田さんにせよ、お兄ちゃんにせよ、十にぃにせよ。
ううん……、と内心首を傾げていると、そーくんが不機嫌そうな顔をしていることに気づく。
「そーくん?」
不思議に思って呼びかけると、今度はそーくんが、お兄ちゃんの手が去って行ったばかりの私の頭を撫で始める。
(そーくんまで……!)
……いや、まぁ、十にぃやお兄ちゃんは、昔から私を褒めるときなどに頭を撫でてくれていたから、2人が私を撫でるのは何となく分かる。
坂田さんの場合は……坂田さんの身長だと、『私の頭の位置が撫でやすいのかもしれないから』かも。
じゃあ、そーくんは……?
(理由が……見当たらない)
そーくんが私を撫でてくれる理由が分からず、私は内心ずっと首を傾げ続けるのだった。
次の日。
もうすっかり元気になった私は、万事屋に向かい、お礼の品を持って江戸の町を歩いていた。
わざわざお見舞いに来てくれたんだから、元気になったことを報告したいと思ったから。
その道中、公園の前を通りかかると、「あ、A!」という元気な声が聞こえて、私は足を止めた。
(この声は……)
「神楽ちゃん?」
振り返りながら問うと、神楽ちゃんが定春くんを連れて走り寄ってきているのが見えた。
「A、元気になったアルか!?
もう寝てなくていいアルか!?」
私の元に着いた途端、心配そうな顔で言ってくれた神楽ちゃんに、私は頷きを返す。
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赤羽@美羽(プロフ) - あやさん» いつも読んでくださりありがとうございます!そういうことを言っていただけると、とても嬉しいです!創作意欲につながります!更新頑張ります! (2019年6月20日 7時) (レス) id: 8b3b438a89 (このIDを非表示/違反報告)
あや(プロフ) - お久しぶりです!更新ありがとうございます!いつも楽しく読ませていただいてます。土方さんと一緒にいる主人公ちゃんを見て怒る沖田さん。主人公ちゃんに優しい沖田さん好きなのでこれからも楽しみです! (2019年6月19日 19時) (レス) id: 98522d48ea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:赤羽@美羽 | 作成日時:2019年3月28日 16時