十五枚 ページ17
でも、何かを万が一忘れ物をしたら大変なので、取り敢えず中也さん宅は一周しておこう、と思った。
.
次の日の午後七時。
私は中也さんに連れられ、再びポートマフィアビルに訪れていた。
エレベーターに乗り込んだ中也さんは、上から二階目のフロアの釦を押した。
そして、エレベーターを降りた中也さんは迷うことなく歩き続け、軈て一つの部屋の前で立ち止まった。
コンコン、と扉を叩き、「姐さん、俺です」と中也さんが言うと、中から「入って良いぞ」という姉様の声が聞こえた。
久し振りに聞く姉様の声に、何処か安心する。
「失礼します」と中也さんが扉を開けると、「A！」と姉様が中也さんを押し退けて私に抱き着いて来た。
「っ……姉様」
「よしよし、A……。
怖かったじゃろう……？
もう大丈夫じゃよ、私が守るからのう」
強く抱き締められて返事が返せないでいると、中也さんが恨めしそうな声で言った。
「姐さん……」
「おや、中也。居たのかえ？」
「気付かなかったわ、済まぬのう」と姉様は言い、私達を部屋の中へ促した。
「まぁまぁ、立ち話も何じゃ。
入っておくれ」
「は、はい。
失礼します……」
「姐さん！俺の話聞いてますか？！」
「ほらA、早う」
「姐さん！！！」
「……」
姉様は中也さんに構うことなく私の背を押し部屋の中へ押し入れた。
中也さんのことが気になって仕舞い、肩越しに中也さんを振り返ると、中也さんはぶつぶつ言い乍らもちゃんと着いて来てくれていて、何だかホッとした。
姉様の部屋は高価な物でいっぱいだった。
赤い絨毯が敷き詰められ、執務机は外国製だと思われる。
置いてあったり、壁に付いているランプは暖かく瞬いていて、何だか幻想的。
キョロキョロしていると、姉様は私にソファーに座る様促した。
ふわふわの皮のソファーに、恐る恐る腰を下ろす。
私の其の様子を見て、前に座った姉様は笑った。
「そんなに気を張らないでおくれ。
其の程度のソファーなら主の家にもあったじゃろう？」
「う、うん……。
でも、何だか緊張しちゃって……」
私がそう云うと、姉様は楽しそうに笑った。
「さて、A。早速本題じゃが……鴎外殿から話は粗方聞いたかえ？」
「……うん」
「そうか……」
姉様は静かに呟くと、私の横に移動し、ゆっくりと私を抱き締めた。
「ね……姉様？」
「もう、大丈夫じゃよ。
私が守ってやるからのう」
「姉様……」
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作者名：赤羽@美羽 | 作成日時：2018年12月28日 1時
