【銀魂】リコリスの花束を君に【沖田総悟】

三十二輪 ページ34

「局長オオオオオオ！！！！
大変なんですゥゥゥゥゥ！！！！
副長がアアアアアア！！！」


「や、山崎さん……！？」



私と坂田さんの横を走り抜けた山崎さんは、私がいるのにも関わらず状況を説明し始める。


山崎さんの話を聞いたその場にいた人々の顔つきが一瞬で変わる。

十にぃが1人で敵陣に突っ込んで行った。
その事実に、私も自分自身の顔から血の気が引いたのを感じた。


「トシが一人で！？
山崎、何でお前今まで黙ってたァ！！」

お兄ちゃんが山崎さんの胸ぐらを掴んで振り回す。

「す、すみません！
副長に固く口止めされていたんです！

親類縁者に攘夷浪士と関係のある者がいることが隊内に知れれば、沖田隊長が真選組での立場を失うと！」

十にぃが1人で敵陣に突っ込んでいったのは、そーくんの為……？

「チッ」


お兄ちゃんが舌打ちをして山崎さんの胸ぐらを離す。

「トシの野郎、ハナからテメェ一人でカタつけるつもりだったな……！
無茶な真似を……！」


……やっぱり、十にぃは優しかった。
誰に何と言おうが言われまいが、十にぃは変わらない。

いつだって、誰かの為に……。



「あの野郎……！」


この場を飛び出していこうとしたそーくんの胸ぐらを掴み、お兄ちゃんがそーくんの動きを止める。

「お前は動くな」

「……」

「ミツバ殿の側にいてやれ。

それに……今のお前では足手まといだ。
剣に迷いのある奴は死ぬ」



無情に放たれた「死ぬ」という言葉に、私は肩を揺らす。



「『俺たちを信じろ』ってかィ……？

冗談じゃねェ。
俺は野郎に貸し作るのだけは御免被るぜ。

近藤さん。アンタ俺を誤解してる。
俺はアンタが思うほど綺麗じゃねェ。
人を信じるとか、そういう奴じゃねェんだ。
テメェのことしか考えちゃいねェ。

いつもアンタ達と一緒にいても、溝を感じてた」


「っ、そーくん……」

お兄ちゃんの纏う雰囲気が変わった気がして、そーくんに声をかけるものの、そーくんは御構い無しに続ける。

「俺はアンタらとは違うって……。
だから姉上もアンタも、アイツを……」


その後は言葉にならなかった。

何故なら、お兄ちゃんがそーくんを思い切り殴り飛ばしたから。

殴り飛ばされたそーくんは、いつの間に寝ていたのか、坂田さんが横になっているソファーに激突する。


「っ、お兄ちゃん！そーくん！」

私は慌ててそーくんに駆け寄る。


「局長！」

山崎さんがお兄ちゃんを咎めるように呼ぶ。

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