二輪 ページ4
暫くすると興奮も落ち着いてきて、ミツバ姉と向かい合いながら話をする。
太陽は既に落ちていて、星の光を遮るものがない田舎の此処からは、星がよく見える。
「この汽車が江戸に着くのって、明日の朝頃だよね?」
「えぇ。
久し振りね、総ちゃん達に会うの」
「うん、手紙は交換してたけど、実際に会うのは……3年ぶりくらい?だよね。
凄く楽しみ!」
「えぇ」
私の言葉に頷いたミツバ姉は、そのまま視線を窓の外へとやった。
でも、きっと見ているのは窓の外の景色じゃなくて。
きっとミツバ姉はまだ、
きっと今回の結婚も、心から望んでするわけじゃなくて。
十にぃのことがまだ好きで、諦められなくて、きっとミツバ姉は悩んでる。
でも、ミツバ姉は優しいから、絶対に何も言ってはくれない。
それが分かっているから、尚更何も言えない自分が歯がゆい。
「ふふ、どうしたの?
1人で百面相なんかして」
「え」
思わず自分の頰に手をやる。
そんな私を見て、ミツバ姉はまた可笑しそうに笑った。
その後は、汽車の中を回っていた駅員さんから駅弁を買って、2人で食べた。
ミツバ姉か私以外の人が作ったご飯を食べるのは、縁談のお相手……蔵場さんとのお食事会があった日以来で、凄く久し振りだった。
ミツバ姉との江戸への道中はとても楽しかった。
だけど、私が1つ気になっていたのは。
「ゴホッゴホッ」
「ミツバ姉……」
ミツバ姉の容態だった。
「大丈夫よ、Aちゃん。
心配掛けてごめんね」
「ううん……」
前より明らかに悪くなっている容態。
蔵場さんは、江戸で治療すれば良いと言って下さった。
だけど……。
「ケホッケホッ」
「っ……」
苦しんでいるミツバ姉を見ていると、「結婚」という選択が、正しいとは思えなかった。
(だけど……)
今結婚できなかったら、きっとミツバ姉は一生結婚をすることが出来ない。
私の世話をしていたせいで、結婚する時期を逃してしまった。
私も18になって、ミツバ姉に世話をして貰わなくても1人で生活できるようになったから。
だから、ミツバ姉には私のことなんか考えずに、幸せになって欲しい。
だから、ミツバ姉自身が結婚することを決めたのだったら、それはできるだけ応援したかった。
だけれど、苦しそうなミツバ姉を見ていると、どうしても今回の結婚には心から賛成はできなかった。
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あや(プロフ) - 赤羽@美羽さん» 受験お疲れ様でした! (2019年3月1日 0時) (レス) id: a0e0346a06 (このIDを非表示/違反報告)
赤羽@美羽(プロフ) - あやさん» ありがとうございます!受験が終わりましたので、どんどん更新していきたいと思います! (2019年2月28日 19時) (レス) id: 8b3b438a89 (このIDを非表示/違反報告)
あや(プロフ) - 赤羽@美羽さん» お忙しい中更新ありがとうございます!受験頑張ってください!これからも楽しく読ませていただきます。 (2019年2月11日 19時) (レス) id: a0e0346a06 (このIDを非表示/違反報告)
赤羽@美羽(プロフ) - あやさん» コメントありがとうございます!もうすぐで受験が終わるので、そうしたらもっとテンポよく更新できるようになると思います!これからも読んでいただけると嬉しいです! (2019年2月11日 16時) (レス) id: 8b3b438a89 (このIDを非表示/違反報告)
あや(プロフ) - 初めまして。沖田さんが好きで読ませていただいています。更新ありがとうございます。ミツバ篇好きな話なので、これから主人公ちゃんもどうなるか楽しみです! (2019年2月10日 12時) (レス) id: a0e0346a06 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:赤羽@美羽 | 作成日時:2018年11月18日 2時