【銀魂】リコリスの花束を君に【沖田総悟】

二十八輪 ページ30

何かないか、と話題を探していると、ミツバ姉がポツリと言った。


「銀さん」

その声に視線をミツバ姉に向けると、ミツバ姉は続けて言った。

「昨日は、山崎さんと何を話していたんですか？」

その言葉に、坂田さんは言葉を濁した。


「あァ？何でもねェよ、気にすんな」

「そう言われると、余計に気になります」


……確かに、隠されると更に気になってしまうのが人間というもので。


「……私も、気になります」

私も加わり畳みかけて聞くと、坂田さんは言う。

「野暮なこと聞くねェ。
男が隠れてコソコソ話してたら、コレの話題に決まってるだろ？

アンタも見る？」

坂田さんが取り出したのは……ビデオ？



……と、次の瞬間。

サッ、と目の前に影が走ったかと思うと、私の視界が真っ暗になる。
思わず私の目の前にあるものをペタペタと触ると、それがミツバ姉の手だと分かる。


「……ミツバ姉？何も見えない……」

「Aちゃんにはまだ早いわ」

「……？」


何故ビデオテープを見てはいけないのか。

分からなかったけれど、(ミツバ姉がそういうのなら)と、私は大人しくされるがままになる。


「あら？随分過保護なのね、お宅」

坂田さんがそう言うと、ミツバ姉は「ふふ」と笑い、
「私“達”の大事な妹ですもの」
と言った。



(……また、『妹』と言ってくれた)

ほんのりと胸があたたかくなり、私は胸の前で手を握りしめる。



「……銀さん？
それ、早くしまってくれません？」

「あ？あァ、はいはい」


坂田さんのだるそうな声の後に衣擦れの音が聞こえた後、私の視界に光が飛び込んでくる。


(……目が、変な感じ)

いきなりの光に目が慣れていないのか、目が少し変な感じがした。



その変な感触を拭いたくて目をぱしぱし瞬いていると、ミツバ姉が寂しそうに言った。

「男の子って、幾つになってもそうなのね。
集まってはつるんで悪巧みばかりして」

ミツバ姉が昔を懐かしむように目を閉じる。

「あの人達もそう。
男同士でいる時が、一番楽しそうで。

結局、女の子の入り込む余地なんてないの。


皆、私達を置いて行ってしまったわ。
……振り向きもしないで……」


……そんなことを考えていたのなんて、知らなかった。

まだそーくん達が武州にいた頃は、今よりずっと幼くて、自分の周りのことしか見えてなかったから。

そーくん達が男の子だけで集まっているのも、「仲が良いんだな」くらいにしか思わなかった気がする。

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