【銀魂】リコリスの花束を君に【沖田総悟】

二十五輪 ページ27

坂田さんはそう言って、私に背を向け歩き出す。


「どうせテメェも姉ちゃんとこ行くんだろ？
ほら、置いてくぞ」

「あ」


待ってください、と、広い背中を追いかける。



病院への道中、坂田さんは本当に優しかった。

さり気なく車道側を歩いてくれたり、先にエレベーターに入り込みドアを開けてくれたり。


車の排気ガスに思わず咳き込んでしまったときも、
「お前……どっか身体悪いの？」
と、坂田さんは私の身体を心配してくれた。

「いえ、ちょっと咳き込んだだけです」


そう否定すると、「あんま無理すんなよ」と言ってくれた。





そんな姿を見て、思わず私は問いかける。

「……坂田さん、とてもモテますでしょう？」

「あァ！？喧嘩売ってんのか？
買うぞ、買っちゃうぞ」


地雷を踏んでしまったのだろうか、と焦る私を見て、坂田さんは面白がるような笑みを浮かべると、

「何々？もしかして惚れちゃった？」

と聞いてくる。


「そ、そんな事は……っ！」

咄嗟に否定してしまうと、

「えぇ……そんなに全力で否定されると銀さん傷付いちゃうんだけど」

と言われてしまい、私はさらに慌てる。

というより。

(手のひらの上で転がされてる気がする)


そんな私の様子を見て楽しそうに笑った坂田さんは、頭をわしゃわしゃと撫でながら言った。


「冗談だって、気にすんな」

「……はい」





坂田さんの言葉に頷いてミツバ姉の病室の方を見ると、丁度蔵場さんが私達と反対方向に出て行くところだった。


「あァ、あそこか」

「はい」



病室の中を覗き見ると、ミツバ姉はつまらなそうに何もない天井を見つめていた。


それを一緒に見ていた坂田さんは、私の肩を掴み、ふるふると首を振る。

どうしたのかと首を傾げていると、坂田さんは袋の中から１つお菓子の袋を取り出し、かさかさ、と振った。


そしてそのまま、「にぃっ」と病室に顔を出す。
その後ろに続き、私も顔を出した。


「来たよ、ミツバ姉」


その様子を見たミツバ姉は、やっと楽しそうに笑ってくれる。

たったそれだけのことが、私にとってはとても嬉しいことだった。





「凄い、本当に依頼したら何でもやってくれるのね」

「万事屋だからな」

「Aちゃんも、来てくれてありがとう」


そう言って体を起こしたミツバ姉に「ううん」と首を振り、私は言った。

「遅くなってごめんね。
はい、これ」

ミツバ姉は私が差し出した便箋セットを受け取ると、
「まぁ、可愛い」
と笑ってくれた。

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