三十輪 ページ32
「ミツバ姉……!?ミツバ姉……!!!」
動揺してミツバ姉の名前を呼ぶことしか出来ない私の代わりに、坂田さんがナースコールしてくれ、ミツバ姉はすぐに集中治療室に運ばれた。
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縺れる足を何とか動かし、坂田さんの助けを借りながら私もミツバ姉を追いかける。
しかし、集中治療室から出てきたお医者様は、非情な一言を私に告げた。
「……それ相応の覚悟は、しておいて下さい」
「……ぅ……」
「嘘だ」という言葉は、音になることがなく、私の喉から空気になって抜け出ていく。
身体から力が抜けて、その場にへたり込んでしまう。
「っ、おい!」
坂田さんが私の身体を支えてくれる。
私は、完全に全体重を坂田さんに預けている形になってしまった。
「……嘘……そんなの、嘘……。
だって、さっきまで……」
「幸せにならなきゃ」と言っていたミツバ姉の姿が思い出され、余計に頭の中が混乱していく。
……と、急いで走ってくる足音に、ゆっくりと振り向いた私の目に映ったのは。
「……お、兄、ちゃっ……。
そー、く……」
お兄ちゃんとそーくんはそのまま集中治療室のガラスに駆け寄り、中の様子を見る。
「っ……」
「おい、しっかりしろ!」
息苦しさからそれ以上顔を上げていることができず、下を向くと、咳が出てきて止まらない。
「ハァッ、ハァッ……」
息を吸おうとすればするほど苦しくなる。
呼吸ができない。
いつもなら上手く対処できるはずなのに、何故か今に限って対処が上手くできない。
……今は皆、私なんかに構っている場合じゃないのに。
どうして、今に限って……。
生理的に滲んだ涙が頰を伝い落ちていく。
勿論その間も咳は止まらず息も苦しいまま。
あまりの苦しさに、私は思わず坂田さんの着流しを掴む。
「っ、Aちゃん!?
大丈夫……」
「……」
坂田さんは、私の様子に気付いたお兄ちゃんを手で制止すると、私を見て言った。
「おい、聞こえるか」
その言葉に、酸素不足から意識を失いかけていた私は、やっとのことで頷く。
「いいか、俺に合わせてゆっくり息をしろ。
辛いかもしれねェが、息を吸うことは考えるな。
息を吐くんだ。
いいか、ゆっくりだぞ」
その言葉の後、私は坂田さんと一緒にゆっくり呼吸をした。
すると、段々呼吸ができるようになり、意識も戻ってきた。
私が呼吸をできるようになったことを確かめ、坂田さんは「よし」と言って私を抱き上げる。
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あや(プロフ) - 赤羽@美羽さん» 受験お疲れ様でした! (2019年3月1日 0時) (レス) id: a0e0346a06 (このIDを非表示/違反報告)
赤羽@美羽(プロフ) - あやさん» ありがとうございます!受験が終わりましたので、どんどん更新していきたいと思います! (2019年2月28日 19時) (レス) id: 8b3b438a89 (このIDを非表示/違反報告)
あや(プロフ) - 赤羽@美羽さん» お忙しい中更新ありがとうございます!受験頑張ってください!これからも楽しく読ませていただきます。 (2019年2月11日 19時) (レス) id: a0e0346a06 (このIDを非表示/違反報告)
赤羽@美羽(プロフ) - あやさん» コメントありがとうございます!もうすぐで受験が終わるので、そうしたらもっとテンポよく更新できるようになると思います!これからも読んでいただけると嬉しいです! (2019年2月11日 16時) (レス) id: 8b3b438a89 (このIDを非表示/違反報告)
あや(プロフ) - 初めまして。沖田さんが好きで読ませていただいています。更新ありがとうございます。ミツバ篇好きな話なので、これから主人公ちゃんもどうなるか楽しみです! (2019年2月10日 12時) (レス) id: a0e0346a06 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:赤羽@美羽 | 作成日時:2018年11月18日 2時