二十輪 ページ22
「あ……」
思わず振り返ると、そこにはそーくんがいた。
「っ、そーくん」
「テメェ、姉上とソイツ会わせるつもりだろィ」
「っ」
否定ができなくて、思わず私は黙ってしまう。
「駄目に決まってんだろィ?」
そう言いながら近づいてくるそーくんに、私は思わず訊く。
「っ、どうして……」
「どうしても何もねェだろ?」
そう言って私の前に立ったそーくんを、私は見上げる。
たった数年で、男の子はこんなに変わるんだ、と少し感心していると、そーくんは言った。
「じゃあ逆に訊くがねィ
……姉上のこと突っぱねた野郎を、今の姉上にどうして会わせられるんでィ」
「それは……っ」
十にぃの優しさでしょう?と言いかけた私の言葉を、十にぃが遮る。
「俺ァもう帰るぞ」
「っ、待って、十に……」
「A」
慌てて十にぃの後を追いかけようとした私の腕を、そーくんは掴む。
「っ、そーくん」
力では絶対に敵わないと分かっていたから、視線で訴えてみたけれど、そーくんは腕を掴む力を緩めてはくれなかった。
私は成す術もなく遠ざかっていく十にぃの背中を見つめていた。
十にぃの背中が完全に見えなくなると、そーくんは私の腕を解放した。
今から追いかけても良かったけれど、そんなことしようものならまたそーくんに拘束されかねないので、仕方がなく断念する。
それに、きっとこんな時間に蔵馬さんは私を外に出してはくれないだろう。
「じゃあ、俺も帰るとするかねィ」
姉上に会ってから、と呟いたそーくんは私の横をすり抜け、ミツバ姉のいる部屋に入っていった。
そして、ピタリと襖を締め切ってしまう。
そーくんの背中を見送ってからふと視線に気づき、私は視線を戻す。
すると、銀髪の人が私のことをじいっと見つめていた。
「……えっ、と……?」
私の顔に何か付いているのかと慌てて顔をペタペタ触るも、特に何が付いているわけでもなさそうだった。
「……お宅、色々複雑みたいだねェ」
「……え」
銀髪の人はやる気のなさそうな声でそう呟くと、くぁ、と欠伸をした。
その言葉の真意を図りかねて何も言えない私と対照的に、その人は欠伸を噛み殺しながら言った。
「じゃあ、俺も帰るとするかねェ」
その時、丁度そーくんがミツバ姉の部屋から出てきて、その人に言った。
「じゃあ、俺はこれで。
旦那、今日はありがとうごぜェやした」
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あや(プロフ) - 赤羽@美羽さん» 受験お疲れ様でした! (2019年3月1日 0時) (レス) id: a0e0346a06 (このIDを非表示/違反報告)
赤羽@美羽(プロフ) - あやさん» ありがとうございます!受験が終わりましたので、どんどん更新していきたいと思います! (2019年2月28日 19時) (レス) id: 8b3b438a89 (このIDを非表示/違反報告)
あや(プロフ) - 赤羽@美羽さん» お忙しい中更新ありがとうございます!受験頑張ってください!これからも楽しく読ませていただきます。 (2019年2月11日 19時) (レス) id: a0e0346a06 (このIDを非表示/違反報告)
赤羽@美羽(プロフ) - あやさん» コメントありがとうございます!もうすぐで受験が終わるので、そうしたらもっとテンポよく更新できるようになると思います!これからも読んでいただけると嬉しいです! (2019年2月11日 16時) (レス) id: 8b3b438a89 (このIDを非表示/違反報告)
あや(プロフ) - 初めまして。沖田さんが好きで読ませていただいています。更新ありがとうございます。ミツバ篇好きな話なので、これから主人公ちゃんもどうなるか楽しみです! (2019年2月10日 12時) (レス) id: a0e0346a06 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:赤羽@美羽 | 作成日時:2018年11月18日 2時