10 ページ12
本丸に来て1週間が経ったが特になんの変化もなかった。
刀剣達と会話を交わすことは稀だが、前任の審神者達が相当ひどいことをしたらしく、人間は嫌いだと面と向かって言われたこともあった。
乾いた洗濯物にアイロンをかけはじめる。
毎日洗濯と掃除だけで手一杯だ。
しばらくすると、廊下を1人の男が通った。
白い、あの男は。初めてこの本丸に足を踏み入れた際に床に組み伏せてきた、男だ。
名は、鶴丸国永というらしい。
「あ…………。」
バチっと目が合い、すぐさま座ったまま頭をさげる。
鶴丸「………おい。」
つかつかと彼が近づいてくる音が聞こえた。
心に生まれてくるのは純粋な、恐怖。
ぐいっと顎を掴まれ無理やり上を向かされる。
鶴丸「………は、何だよその目は。」
「も…申し訳…
鶴丸「何でもかんでも謝れば済むとでも思っているのか?」
「っ、」
彼の金の目が威圧的に私を捉える。
鶴丸「…目的は何だ?」
「はい…?」
鶴丸「ここに来た目的だ。」
「私は………お金を稼ぎにここに来ました。」
鶴丸「…………てめぇもかよ。」
パッと手が荒っぽく離れ、鶴丸が立ち上がった。
鶴丸「とっとと出て行け、俗世の毒にまみれた愚かな人間風情が。」
その目は冷たく、汚いものを見るような眼差しだった。
「出来ません。」
でも。
ここを去ることはできない。
もう元の世界には、何もない。
家も、家族も、全て失った。
私がやるべきは、今、この本丸で大金を稼ぐことだ。
「申し訳ありませんが、それは出来ません。」
深く頭をさげると鶴丸が舌打ちをして、胸ぐらを掴んできた。
鶴丸「欲にまみれた人間ほど危ないものはない!!もうこの本丸は…っ、誰にも汚させたくねぇんだ!分かったら早々に
「お金は………。
私利私欲のためではありません。」
鶴丸「………あ?」
目の前の彼が一瞬表情を変えた。
「ですから、何も悪いことはいたしません。
それに私は女中ですから。」
そう言うと鶴丸が無言で胸ぐらを離し、ドスドスと廊下を去っていった。
憂いをたたえた少女の目の曇りは晴れることはなかった。
914人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「刀剣乱舞」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
オーキッド(プロフ) - 輝さん» コメントありがとうございます。もちろん乱は男ですが姉さんと呼ぶ方が乱は喜ぶという設定です。あまり気づいてくださる方がいないのでこのようなコメントは嬉しいです。ありがとうございます。 (2018年7月23日 9時) (レス) id: 500cf8b735 (このIDを非表示/違反報告)
輝(プロフ) - 31話で五虎退が乱を"乱姉"と呼んでいましたが乱は男なので乱兄では? (2018年7月11日 13時) (レス) id: 7ffc6db072 (このIDを非表示/違反報告)
オーキッド(プロフ) - はにーまかろんさん» はにーまかろん様、いつもコメントありがとうございます。刀剣達はまだ全面的に主人公が好きという感情を表に出したくないので刀剣:不器用かつ意地悪vs主人公:気弱、な争い(?)が起こっていく感じですね。これからも宜しくお願いします。 (2016年6月26日 18時) (レス) id: ac6634c0b5 (このIDを非表示/違反報告)
はにーまかろん(プロフ) - 天下五剣の冷笑は暑い夏にぴったりですね!とまあ冗談はさておき、最新話読ませていただきました。お、これは主人公ちゃんへの独占欲が出ているのか!?刀剣男士の反応の意味を1人1人想像しながら楽しく読んでいます。長文&乱文失礼致しました。 (2016年6月26日 18時) (レス) id: 578cdfafe4 (このIDを非表示/違反報告)
オーキッド(プロフ) - (aya*)W.H)さん» ありがとうございます。どちらのシリーズでも少し重い話が入ります。これからもよろしくお願い致します。 (2016年6月15日 7時) (レス) id: ac6634c0b5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:オーキッド | 作成日時:2016年5月26日 6時