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もう暑さも大分和らぎ、秋の風を感じられるようになってきた。
左馬刻からの仕事以降立て続けにセキュリティ強化やシステムチェックの依頼が舞い込み久々のオフの日となった。
今日は断線しそうなコードを買い替えにシブヤの馴染みの専門店へと出向いた。
男「いつもありがとうね、Aちゃん。最近はどうなの?もう売れっ子でしょう?」
「そんなことないですよ。まあここ最近はちょっといそがしかったかな…。」
男「じゃあこれあげるよ、はい。」
「ありがとうございます、いただきますね。」
男「いいんだよ。また来てね。」
「はい、もちろん。じゃあまた。」
カランカランとドアのベルを鳴らしてAは店を後にした。
親しい仲の店長から貰った栄養ドリンクを早速開けた。
小さな店だが店長にはいつもサービスや値引きをしてもらえるので大型の専門店よりシブヤまで足を運ぶことにしているのだ。
ふと立ち止まり、ついでに服も見ようかと近隣のショッピングモールで良さそうなところはないかとスマートフォンで検索をかける。
「…んー…若い子向けが多いわね……っ、と…?!」
?「っ、」
ドンッという衝撃とともに液体が宙を舞った。
誰かにぶつかられ、思わず飲んでいた栄養ドリンクの瓶を落としてしまった。
?「もっ、申し訳ありません。」
「い、いえ。あっ、や、やだ本が…。」
自分の落とした栄養ドリンクの液体が相手の落とした文庫本に染み付いていた。
慌てて拾い上げハンカチで拭き取るがさすがに汚れてしまった。
「ごめんなさい、汚してしまいました…。弁償いたします。」
?「そんな、元はと言えば小生の不注意ですので結構ですよ。本を読みながら歩くなんてするものではありませんね。」
そう言って微笑んだのは和服の青年だった。整った顔立ちに和装がとてもよく似合う。
「邪魔な所に立っていたのは私ですから。お幾らですか…?」
?「ではお言葉に甘えて…。実はこちら初版で限定の表紙のため15万円なのです。」
「じゅう、ご……!??すみません持ち合わせが……こちら名刺です、後日お金はお渡ししますので私の連絡先を…。」
?「冗談ですよ。実はこちら小生の書いたものですので実質無料なところがあります。ですので弁償など結構ですよ。それよりあなたの飲み物を新しく購入しましょう。」
「あ、貴方が書いた本…?ちょ、ちょっと…!」
いい止める暇もなく彼は自販機の方へスタスタと歩いて行ってしまった。
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千(プロフ) - オーキッドさんなりのこだわりが感じられ中々定まらないのはそれだけオーキッドさんの小説への思いからだと思います。生意気な事書いてすみません。でもそれだけ大切なんだと私は思いました。感想だけで申し訳ありません (2019年5月20日 21時) (レス) id: aa8fcb4cab (このIDを非表示/違反報告)
千(プロフ) - こちらこそ温かいコメントありがとうございます。無理せず更新頑張って下さい。楽しみにしてます。又こちらこそよろしくお願いします。夜遅くに失礼致しました (2019年5月19日 23時) (レス) id: aa8fcb4cab (このIDを非表示/違反報告)
オーキッド(プロフ) - 千さん» コメントありがとうございます、お優しい言葉かけに感謝いたします。これからもよろしくお願いいたします。 (2019年5月7日 15時) (レス) id: 500cf8b735 (このIDを非表示/違反報告)
千(プロフ) - この後凄く気になります。楽しみしています。無理しないでくださいね。更新楽しみに待ってます。 (2019年5月6日 23時) (レス) id: aa8fcb4cab (このIDを非表示/違反報告)
オーキッド(プロフ) - 夜桜 奏さん» コメントありがとうございます。素敵なお話だなんて嬉しいお言葉、感謝いたします。これからもよろしくお願いいたします。 (2019年5月6日 23時) (レス) id: 500cf8b735 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:オーキッド | 作成日時:2018年12月2日 23時