唇を塞いで (ページ3)

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でも挨拶をしてもここでしか会えないからまた数時間後には会えなくなる
その後休憩を入れて撮影をしている時そう思った。

この人は声優さんで私にとって雲の上の存在

また普通になるよ

撮影終了後コードをまとめて器具を片付けていると

櫻井:「お疲れ様」

貴方:「お疲れ様です」

櫻井さんは話しかけて来た。

周りの人は皆片付けとか次の撮影とかでバタバタしている中私のところに来てコードを運ぼうとしていた

貴方:「あ、大丈夫ですよ！コードは」

櫻井:「ん？いいの。やらして？俺今暇なの」

ニッと笑っていう櫻井さんは私が持っていたコードを片手で持ってくれた

いや、待って下さい

この仕事は私の仕事で。まさかの雲の上の人にこんなことさせてしまえば…

貴方:「わ、わ、わ、ダメです！櫻井さんは有名人なんですから！」

櫻井さんの腕に触れてコードを取る

このあとどう言おうか

櫻井さんはコードをとった私を見て苦笑していた

これは、怒ってるのか？

怒ってないよね？

微妙に自分の腕が震えていることに気がついた

櫻井:「ははっ、なるほど。俺有名人じゃないよ？それに、本間さん1人にそんな荷物持たせるのは嫌だしね」

優しそうな口調でそういうと櫻井さんは私の肩に触れてからコードをとった

この人は

貴方:「…お仕事は？」

櫻井:「今日はこれでなし。本間さんは？」

貴方:「…これから、また1人撮影があります」

櫻井:「そうか。頑張ってね」

何を考えているのか私にはわからない

コードを持っている櫻井さんと並んで歩きながら荷物を運んでいると急に携帯を取り出して来た

櫻井:「携帯…ある？」

貴方:「すみません。いまはないです」

携帯はちょうど控え室のバックの中に入ってる
なんだろう？

何をするのかわからなくて疑問に思いながら櫻井さんを見ると櫻井さんは私の手を掴んでそこに黒ペンで何か書いた

貴方:「く、くすぐったいです！？」

櫻井:「ごめんごめん。…はい」

手を離されて見ると何か電話番号が書かれていた

誰の？

櫻井:「俺のだよ」

貴方:「えぇ」

心を読んだかのように発せられた言葉は私の耳へと入って来た

待って

これってことは

貴方:「…え？」

櫻井:「追加しといて。俺の。で、何かあったらかけてよ」

貴方:「何かって？なんですか？」

櫻井:「…んー。会いたい時とか助けて欲しい時とか。ね？」

年上の人は何を考えているのか分からない

私は手のひらを見ることしかできなかった。