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You side
「おまたせいたしました。赤ワインです」
「ありがとうございます」
グラスに注がれたワインをくいっと飲む。
最近本当にいいことがない。
仕事では雑用ばかり。押し付けられた仕事を断れるはずもなく受け入れてばかりだ。
なにかあればすべて私のせい。
快く受け入れてしまってる私が悪いのだろうか…
もうやめようかな。
何か月も前から書いていた退職届を出す時かもしれない。
そんな風に思っていた時だった。
「お姉さん一人?」
後ろから声をかけられる。
黒いジャケットを着たそこそこ高身長の男性が後ろに立っていた。
「そうですけど…」
「一緒に飲んでもいい?」
「あ、はい」
そういうと男性はよかった、と言ってにっこり笑う。
イケメンだなぁこの人…
椅子に座った彼はマスターにウイスキーを頼む。マスターははい、と言って店の奥へと姿を消す。
「ねえ、何て名前?」
彼が頬をつきながら聞いてくる。少しあざとい。
「Aです」
「A、か。可愛い名前だね」
「ありがとうございます、そんなこと言われたの初めてです」
「ええ、そうなんだ」
ふふっと笑う彼は不覚にもキュンと来てしまうような笑顔をしていた。
「ウイスキーです」
「ありがと。乾杯する?」
「いいですね、しましょう」
「じゃ、乾杯」
ワイングラスの薄いガラスとウイスキーグラスの厚めのガラスがカンという音をたてる。
だんだんと酔いが回ってきたのだろうか、頬が熱くなった気がする。
「女の子に年齢聞くの悪いんだけど聞いてもいい?」
「全然いいですよ、23です」
「ってことはまだ大学卒業したばっかり?」
「そうですねぇ」
「ほっぺた赤いけど、お酒強くない感じ?」
「あんまり強くないほうですね…ばれちゃいました?」
「ばっればれだよwこのバーよく来るの?」
「あんま来たことないです。最近お酒飲んでないなぁと思ったのと仕事いやになっちゃって」
「なんかあったの?良ければ話聞くけど」
「ええいいんですか?」
この男の人いい人だなぁ…。この人になら話してもいいかもしれない。
「私まだ新人なんですよ。でも1年くらいたつんですけど。どの人も期限ぎりぎりのお仕事全部押し付けてきて。一度受け入れちゃうと何度も何度も頼まれちゃって断れないんですよねぇ」
「そっかそっか。押し付けられちゃうと大変だよね…」
頷きながら話を聞いてくれる。本当にこの人いい人だなぁ
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作者名：綺音 | 作成日時：2020年8月7日 17時
