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駆堂君に胸ぐらを掴まれ呻き声を上げた長老さんを見て、
キッカさんが悲鳴を上げる。
そして忍霧さんに駆け寄った。
「あなた返して!! 私の包丁返して!!」
「······!!」
もちろん女性が苦手な忍霧さんはキッカさんから遠ざかる。
入出君の後ろにまわりこんだ忍霧さんを追いかけるキッカさん。
また遠ざかる忍霧さん。
当然、繰り返すと入出君を挟んでグルグル回りだすわけで。
「ふ···ふざけないで早くしないと···」
入出君がバターになりますよ。ちびくろサンボみたく。
すると、今まで座布団に座り黙って話を訊いていた路ヶ森さんが口を開いた。
「でも案としては面白いんじゃないか?
鬼のアジトを突き止めれば今まで攫われた子も一気に開放できるよ」
「まだ生きてれば、な」
「生きてます!」
ぞっとしないような仮定を口にした鬼ヶ崎さんを否定するように、
キッカさんが声を上げる。どこか必死なように聞こえる声を。
「······わからねェだろ?」
「わかります!!
だって···だって鬼といってもみんながみんな人間を食べるわけでは···」
「これキッカ」
長老さんに声をかけられ、キッカさんはシュンと身を縮こめる。
それを見て鬼ヶ崎さんも溜め息を吐くように呟いた。
「···どうも難儀だねェ」
「つーかテメーは今回のゲーム参加確定だぞ」
駆堂君に言われ、あン? と反応する鬼ヶ崎さん。
あー、確かに。
「育成ゲームのときに自分で約束したろ」
「ええ。“次のに回してくんな”と」
「···覚えてやがったか」
「たりめーだ」
この人まさかすっぽかすつもりだったのか。
「それじゃメンバーはカイさんと···ザッくん行くかい?」
「? なぜ俺が···」
悪戯っぽい笑みを浮かべる路ヶ森さんはその理由を述べた。
「君たち最近仲良しだろ? よく揃っていなくなる」
“被害者全員が味方とは限らねェぜ”
不意に、鬼ヶ崎さんの言葉を思い出した。
今はむしろ邪魔になる言葉だと考え、思考からそれを締め出す。
そんなわけ······ないですよね。
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作者名:花藺 | 作成日時:2017年11月8日 19時