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僕たちがうるさく漫才もどきをしていると、伊奈葉さんがふと立ち止まる。

「ここ···今までの場所とはなんだか雰囲気が違いますね···」

伊奈葉さんの言うとおり、ここは石畳にうっすらと水の膜があったり
吐く息は白かったりと季節感が感じられないゲノムタワー周辺とは
随分違いがある。
いや······変わらず季節感はないけれどここだけ他より寒いって感じか。
寒さも冬のそれではなく······例えるならばお化け屋敷のような。
そういう、薄気味悪いなにかが漂っているように感じられる。
コツコツという靴音を耳に思案していると、突然の声に遮られた。

「ヒ···ヒミコちゃん怖い? 大丈夫? 怖い?」
「あ···いえ大丈夫です」
「なんだったら私、手つなぐわ。ねっ、つなぎましょうそれがいいわ」
「は···はい」

ガクガクと震えながら伊奈葉さんの手を握る更屋敷さん。
すごいべちょりっていう音がした気がする。

『手汗が···』

さらに見ていた路ヶ森さんと入出君も二人に駆け寄る。

「ずるい。いいな!! ボクも交ぜてくれ!!」
「俺も!! 俺も!!」

そして出来上がった見事な扇。
お察しのとおり、扇って五人技な訳でしてね?
被害者は逢河さんです。御愁傷様。

「オイそこ広がんな。通行の邪魔だ」

その通りです。
こんな時でも突っ込む······流石駆堂君。

「更屋敷さんも怖いなら怖いと仰ればいいのに」

更屋敷さんの白い手にそっと手を伸ばす。

「わ、私べつに怖いわけじゃ······っレオさん!?」
「嫌ですか? こうすれば怖くないと言っていましたので」
「い、嫌じゃないデス」

心なしか赤くなった気がする更屋敷さんに微笑みかける。
でも確かに手汗すごいかも。

「それならよかった。
 ······っと、入出君、ぱんだ工房が
 気になるのはわかりますが後にしてください」
「はーい」

でも本当ぱんだ工房ってなんなんだ······と思う僕は気がつかなかった。
更屋敷さんが呟いた声に。

「さらっと手つないじゃうなんて······反則だわ」
 
 
 

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作者名:花藺 | 作成日時:2017年11月8日 19時

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