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〈No side〉
そのころ······。
食堂を飛び出したアンヤは、パカパカ牧場の小屋で胡座をかいていた。
ボンヤリとした目線の先には、ムラサキのお絵かき。
マキノさんと書かれた紙に、
違う紙のむらという文字の横のパンダの顔。
さらにもう一枚の紙にはおっかさんという文字の下に顔が一つ。
その隣のおっとさんの下には二つ。
そして、
あねさという文字を塗りつぶしてあんちゃ、と書きかえた下に描かれた顔。
普通なら笑ってしまいそうなその絵も、
アンヤはぼーっと眺めるだけ。
ただ、ガラと引き戸が開いた音のみに反応して、顔をひきつらせた。
「···っ入ってくんな!!」
水も滴るいい男となったアカツキは入り口のところでピタリと止まる。
雨垂れの音が反響し、小屋の中は隔離された空間のよう。
その空間を破ったのは、やはりアカツキの声。
「アンヤ君。俺、体育2なんです」
唐突にそう言ったアカツキに、アンヤは険悪な顔を向ける。
その表情は、なに言ってんだこいつという気持ちを物語っていた。
「···あ?」
そんな反応にもめげずに、アカツキは彼に語りかける。
「もしまた君が倒れても、
必ず背負って逃げ切れるとは限りません」
アカツキの瞳は、アンヤを射抜く。
「俺は全員でクリアしたいんです。
君がいてもらわないと困ります」
真っ直ぐな目だった。
曲がることを知らないような、真っ直ぐな目。
真剣な目と声を受けて、アンヤはグッと拳を作る。
そんなアンヤの目の前に、ゴトリとひとつの瓶が置かれた。
「薬ここに置きます。
······外で待ってますね」
そう言い残してアカツキは外に出て······
いかなかった。
「あの···思ったより激しいんで···
中で待っててもいいですか?」
「テメーな!!」
アンヤからそこはガマンしろや、とツッコミが飛ぶ。
シリアスクラッシャーアカツキである。
「テメーはほんとに·········ったく」
折れたのはアンヤだ。
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作者名:花藺 | 作成日時:2017年11月8日 19時