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しばらくしても、僕と忍霧さんはまだ建物の中にいた。
外は相変わらず大雨で、ザアザアと雫を次から次へ落としていく。

「霧ヶ野」
「······どうしました?」
「お前も······協力はしてくれないのか」

うつむいて、両手を拳にしたままで。
忍霧さんは、僕にもそう聞いた。

「協力······したいのは、やまやまなんですけど」
「ならっ!」「でもっ!」

期待を込めたように顔を上げた忍霧さんに、
言い訳をするように、反対にうつむいた僕。

「無理なんです······」

出した声は、驚くほどに弱々しくて。
 
 
―――
――――――
――――――――――――

〈忍霧ザクロside〉
 
「無理なんです······」

目の前にいる霧ヶ野は、いつもの冷静な面影もなく。
弱々しく、今にも消えてしまいそうな声音で、そう言った。
最初から、おかしなやつだと思っていた。
馴れ合っているように見えて、どこか一歩引いている。
冷静で孤高で。
どこか矛盾だらけな気がして変だと思っていた。
その矛盾が、これ(・・)なのかもしれない。
強かに生きているように感じていたのに、
今のようなふとした弱さ。
こいつも人間だったのか、と当たり前なことを考えてしまう。
こいつに人間らしさがなかったのか、と聞かれれば、そうではないのだ。
ただ、どこか浮いているように感じる。人間という肩書きが。
演劇の役というか······この街のように、現実味が薄いのだ。
ふと、ひとつの疑問を覚えた。

「霧ヶ野は······なぜこのゲームを始めた?」

瞳に悲痛な色が浮かんだ。
触れてはいけないものに触れてしまった。そんな罪悪感。

「いや、言いたくないなら別にいいんだが······」

フルフルと、ゆるやかに首を左右に振る。
分かりやすくためらいながら、口を開く。

「僕も······あなたと似たようなものですよ」

俺と、似たようなもの?
 
 
 

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作者名:花藺 | 作成日時:2017年11月8日 19時

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