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「···なるほど。
 お前さんやけにここの仕組みに食いつくと思ったらそういうことかい。
 ···で? なんでそれを俺たちに話した」

忍霧さんの話を受けて、鬼ヶ崎さんはそう問いかける。
······言ってしまえば、僕たちは赤の他人でしかない。
僕が彼を知っていることも、ただ、一方的なものだ。
さっき忍霧さんが話したそれの内容は、
知り得るためになかなかの信頼を得る必用がある······はず。

「···皆が従順にゲームに取り組む中、
 鬼ヶ崎だけが脱出の最短ルートを進もうとした。
 霧ヶ野も、どこかここの仕組みに探りを入れているように感じた。
 つまり、お前たち二人が一番帰ることに執着している。そう思った」

帰ること······。
家に、戻ること······。

「妹もだれよりもそう思っていたはずだ。
 あいつは家から···俺から離れるのを極端に嫌う。
 この一週間皆を観察していたが鬼ヶ崎の行動と性格が一番妹に酷似していた」

鬼ヶ崎さんは、興味なさげに首筋をガリガリと掻いている。
そして、忍霧さんは僕の方にも顔を向けた。

「霧ヶ野も······なにか思うところや分かることもあるんじゃないか?
 お前たちと行動を共にすれば妹の消息を知るヒントになるかもしれない。
 だから···」
「わかったわかった」

忍霧さんの言葉を遮って、どこか不機嫌に鬼ヶ崎さんが口を開く。

「俺ァ検体モルモットってわけだな」

必死でそれを否定する忍霧さん。

「ちがう···! 情報共有だ」

少しうつむきがちになりながら言葉を探していた忍霧さんは、
ためらいながらも拳を固め、決意を固めた。

「この街も、ゲームも。
 俺が想定していたものより規模が大きい。
 ···ひとりでは何年かかるかわからない」

そこまで言って、うつむいていた顔をバッと上げて僕たちの瞳を見据えた。

「お前たちが探索で得た情報をすべて教えてほしい。
 俺もお前たちにすべて伝える···!!」

どう答えるべきなのか。
鬼ヶ崎さんの顔をうかがうと冷めた目付きはそのまま、口元に弧を描いていた。
 
 
 

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作者名:花藺 | 作成日時:2017年11月8日 19時

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