* ページ21
うつむいていた顔を僕たちにまっすぐ向けて、
忍霧さんは意を決したように口を開いた。
「双子の妹を捜している」
彼の、双子の妹。
僕の······。
「私」の唯一とも言えるお友だち。
「二年前のことだ。
ネット上に『ナカノヒトゲノム』のβ版が出回っただろう。
妹は新しいゲームを試すのが好きでな。俺にも勧めてきた」
『姉さん姉さん! 見て見て。『ナカノヒトゲノム』だって。
不思議なタイトルのゲームだねぇ! 一緒にしようよ!』
『ユウナ、姉さんの邪魔はしたらダメだってば』
『別に邪魔じゃないのに······でもここのところ忙しいから、ごめんね』
『レイナちゃん久しぶり! そうそう、ナカノヒトゲノムって知ってる?』
『あれ? サクラちゃんもやってるの?』
「俺は当時進級試験を控えていたから断ったんだが。
先に実況を始めた妹がクリア直前で失踪した。忽然とだ」
『もうちょっとでクリアできそうなの!』
『これ、結構ボリュームもあるし面白いよ。姉さんもやってみたら?』
『ふふん。もうちょっとでクリアだよ!
ザクロにも見せつけてやろうっと』
「二年間、捜せるあてはすべて捜した。
でも妹は見つからなかった。警察や両親までもが捜索を諦めかけている。
だから俺は一縷の望みをかけた」
『······ユウキ? ······ユウナ?
どこ? どこに行ったの? ねえ!?』
『お、お嬢様、落ち着いてください!』
『サクラちゃんも······行方不明?』
「俺は妹を捜すため、わざとここへ誘拐されたんだ」
ユウキ。
ユウナ。
あのとき断らなかったら。
サクラちゃん。
もっと連絡をとっていたなら······。
まったく本当に。
なぜ後悔は先に立たないものなのか。
81人がお気に入り
「オリジナル」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:花藺 | 作成日時:2017年11月8日 19時