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うつむいていた顔を僕たちにまっすぐ向けて、
忍霧さんは意を決したように口を開いた。

「双子の妹を捜している」

彼の、双子の妹。
僕の······。
「私」の唯一とも言えるお友だち。

「二年前のことだ。
 ネット上に『ナカノヒトゲノム』のβ版が出回っただろう。
 妹は新しいゲームを試すのが好きでな。俺にも勧めてきた」
 
 
 
『姉さん姉さん! 見て見て。『ナカノヒトゲノム』だって。
 不思議なタイトルのゲームだねぇ! 一緒にしようよ!』
『ユウナ、姉さんの邪魔はしたらダメだってば』
『別に邪魔じゃないのに······でもここのところ忙しいから、ごめんね』

『レイナちゃん久しぶり! そうそう、ナカノヒトゲノムって知ってる?』
『あれ? サクラちゃんもやってるの?』
 
 
 
「俺は当時進級試験を控えていたから断ったんだが。
 先に実況を始めた妹がクリア直前で失踪した。忽然とだ」
 
 
 
『もうちょっとでクリアできそうなの!』
『これ、結構ボリュームもあるし面白いよ。姉さんもやってみたら?』
 
『ふふん。もうちょっとでクリアだよ!
 ザクロにも見せつけてやろうっと』
 
 
 
「二年間、捜せるあてはすべて捜した。
 でも妹は見つからなかった。警察や両親までもが捜索を諦めかけている。
 だから俺は一縷の望みをかけた」
 
 
 
『······ユウキ? ······ユウナ?
 どこ? どこに行ったの? ねえ!?』
『お、お嬢様、落ち着いてください!』

『サクラちゃんも······行方不明?』
 
 
 
「俺は妹を捜すため、わざとここへ誘拐されたんだ」
 
 
 
ユウキ。
ユウナ。
あのとき断らなかったら。

サクラちゃん。
もっと連絡をとっていたなら······。

まったく本当に。
なぜ後悔は先に立たないものなのか。
 
 
 

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作者名:花藺 | 作成日時:2017年11月8日 19時

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