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〈レイナside〉
ピアノ演奏も食事も何事もなく終わり、
僕は演奏をこれでもかというほど誉めちぎられた。
今は最後まで片付けを手伝わせるパカさんの横で皿洗いをしている。
「お疲れさまでした」
「本当ですよ。身体的にも精神的にも疲れました。
まして僕らは昨日まで命がけで謎の生物と交戦していたというのに」
深く、それは深く深く溜め息をつく。
ついでにパカさんを睨んでおいた。
「フェ〜。ですが······」
ふざけた雰囲気だったのがガラリと変わった気がした。
「ワタクシも鬼ではございません。
霧ヶ野様······いえ、「霧音」様の働きに対する
報酬を差し上げましょう」
そう言って取り出したのは二つの金属製のブレスレット。
「どうぞ」
不吉な予感がした。
でも、受け取るべきだと思った。お得意の、勘だ。
「あなたが、今いちばん求めているものだと思いますよ」
パカさんの手から、僕の手へ、それは渡ってくる。
軽く握って、そして開く。恐々と、視線を下ろした。
「っ!」
グラリ、と視界が傾いだ。重く硬い鈍器で頭を殴られたような、そんな衝撃。
呼吸が、上手くいかない。
酸素が、頭に足りていないような、そんな感覚に見舞われる。
しばらくして落ち着くと、目の前にいたパカさんはいなくなっていた。
キッチンもいつも通り綺麗に片付いている。
ただ、手のひらの中にある冷たい塊が、これが現実だと言わしめていた。
震える手が、もう一度二つのブレスレットを見るために開かれる。
だれかに、嘘だと言って欲しい。
そこに、
「YUKI KIRINE」と、「YUNA KIRINE」と刻まれていることが。
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作者名:花藺 | 作成日時:2017年11月8日 19時