45.どこかで。 ページ46
「…次のニュースをお伝えします。
先月、男子高校生を轢き逃げした事件。犯人は未だ捕まっておらず、警察は────」
機械のようなアナウンサーの声。
きっと、この事件も彼女にとってはどうでもいい事のひとつなのだろう。
まあ、ひとつひとつ感情移入していたらやっていけないのなんて当たり前だが。
ぶちり、とテレビの電源を落とす。
こんな胸糞悪ぃ話、聞いてらんねえよ。
……ったく、休日に学校に入るのに何で制服じゃなきゃいけね〜んだよ。
いそいそと制服のブレザーに腕を通す。ピアスを嵌めると、いくつかの荷物を持って家を出る。
トントンと踵を鳴らすと、学校に向かって歩き始めた。
･
「あっ、ガミさんだ〜！ 休日にここにいるなんて、珍しい、ね………」
最後の方が小さくなったのは、小太郎を見つけたからだろう。
何奴も此奴も、散歩中の俺を見つける度に同じような反応しやがって。
「……まあ、約束したしな」
そう。約束。
ある日、急に俺の教室へ来たかと思うと何を思ったのか、俺様を呼び出しやがったのだ。
それまでのアイツに対しての印象は、頭も口調も固ぇ奴。それだけ。
話したことも数えるくらいしか無かったんだし、そりゃ驚いた。
『僕、犬を飼ってるんですよ』
小太郎って言うんですけどね。
唐突にそう笑顔で告げるアイツは本当に幸せそうで。死にたいやつの顔なんかには思えなかった。
『それで、僕が死んだら小太郎を預かってほしいんです』
つい、止めてしまう。こいつの死にたがりは学院で有名だったのに。
「……死ぬんじゃねえよ」
何で俺様がこいつを止めなきゃなんねぇんだよ。そこまで仲がいいわけでもないのに。
それより、俺に頼むならアホの明星にでも頼めばいいんじゃねえの。
…ったく、こいつは本当に読めねぇ。
『ふふ……じゃあ、頼みましたからね！』
手を振って、軽やかに駆け出していく。
思い出を頭を振って追い出す。過去のことで悩むなんて、俺らしくねぇ。
リードを再び握り直し、大吉と遊んでいる2匹に声をかける。
「おい、レオン、小太郎。行くぞ」
小太郎だなんて、アイツらしいネーミングセンスだ。
ゆったりと歩きながらそう思う。
こんな事考えるなんて性にあわね〜が。
･
いつか、どこかで生まれ変わったアイツに会えたらいいよな。
ー f i n ー
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無名(プロフ) - 何年も前の作品みたいなのでお返事は返って来ないんだろうし伝わることもないのかもしれないとは思いつつも最高の話すぎてコメントを残したい。思わず涙出るほど感動しました。いいテンポで進んで読みやすかったです。最高の作品をありがとうございます。 (2023年1月3日 8時) (
レス) @page47 id: 04d38e0bdf (このIDを非表示/違反報告)
咲耶(プロフ) - この話凄く好きです。感動しました！ (2018年10月16日 5時) (レス) id: e18275a362 (このIDを非表示/違反報告)
早姫(プロフ) - 感動しました〜...！こう...仲間の大切さとか､友情ってこんな感じなんですかね？もしも､男主君が転生したら今度は幸せになって欲しいです〜！感動し過ぎて､涙が止まらず親に驚かれました...(￣▽￣;) (2018年5月24日 17時) (レス) id: 37587c2084 (このIDを非表示/違反報告)
果凛(プロフ) - かきぴーさん» 返信が遅くなり、申し訳ありません汗 そこまで言っていただけるなんて……！ありがとうございます。目を擦ったら腫れるので、ちゃんとハンカチで押さえてくださいね。笑 (2018年3月21日 8時) (レス) id: 38593f3572 (このIDを非表示/違反報告)
かきぴー - さっきから目を開いても前がよく見えないと思ったら瞼が腫れてるだけでした。めっちゃ号泣しました！！！隊長イケメン！！好き！！好きです！！！最後は家族の元に旅立ってしまった男主でしたが、仲間の大切さがよくわかる話でした！！ (2017年12月15日 22時) (レス) id: 41dff5bdb3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：果凛 | 作成日時：2017年8月30日 17時
