43.だいすき。 ページ44
「…ねえ、A？」
海からの帰り。隣を歩く泉先輩に話しかけられます。
『………はい、どうしましたか？』
なんだか怒られるような気がして返事が遅れてしまったのは仕方の無いことだということにしておいてほしいです。
「記憶、戻ったんでしょお？ 口調元に戻さないの？」
先程、アイドル科全員に記憶が戻ったことを伝えました。僕が記憶を失ったのは、2年生に入ってすぐです。兄さんの俳優デビューの祝いと、僕の進学祝いを込めての旅行だったのです。
なので、2年生以上は僕の元の性格を知っていました。1年生は、僕は元々こうではなかったということを知って驚いていましたが。
多分、性格が変わったのは記憶喪失のせいでしょう。
『…はい、僕は口調は戻さないつもりです。
こっちの方が慣れているので』
そう告げると、泉先輩も満足気に頬を緩めます。僕が口調を戻すと言ったら不機嫌になったのでしょうか。
……まあ、怒られるわけではなくて良かったです。
『……あ、信号赤ですよ』
泉先輩の腕を引いて止めます。
すると驚いたような表情でこちらを振り返りますが、何故でしょう。何か変なことをしたでしょうか。
「……Aに止められるとはねえ…。
………ありがと」
今度は僕が驚く番です。先輩の貴重なデレが見られました。
後ろにいる羽風先輩と千秋先輩も驚いています。貶されたような気もしますが気にしません。
……あ、信号が緑になってしまいました。これではあまり止めた意味が無かったですね。
でも、なんだかすごく気分が良いです。
鼻歌を歌いつつスキップで皆さんより前に進みます。曲は流星花火です。
「……ねぇ、A？」
『はい、なんでしょう？』
くるり。振り返って答えます。泉先輩は、前にいる僕に届くように少し大声です。
その心遣いだけで嬉しい僕は、重症でしょうか。
「……もう、死のうとしたりしないよねぇ？」
当たり前です。答えは、1つに決まっています。
『はい、もちろん！ だって僕は、皆さんのことが大好きななんです』
から、という声は急ブレーキの音と皆さんの悲鳴によってかき消されてしまいました。
目の前には、あの時と同じようなトラック。
足がすくんでしまい。動きません。
「A！！ 避けて！！」
すみません、泉先輩。
大きな衝撃とともに、僕の意識は途絶えてしまいました。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 256人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
無名(プロフ) - 何年も前の作品みたいなのでお返事は返って来ないんだろうし伝わることもないのかもしれないとは思いつつも最高の話すぎてコメントを残したい。思わず涙出るほど感動しました。いいテンポで進んで読みやすかったです。最高の作品をありがとうございます。 (2023年1月3日 8時) (
レス) @page47 id: 04d38e0bdf (このIDを非表示/違反報告)
咲耶(プロフ) - この話凄く好きです。感動しました！ (2018年10月16日 5時) (レス) id: e18275a362 (このIDを非表示/違反報告)
早姫(プロフ) - 感動しました〜...！こう...仲間の大切さとか､友情ってこんな感じなんですかね？もしも､男主君が転生したら今度は幸せになって欲しいです〜！感動し過ぎて､涙が止まらず親に驚かれました...(￣▽￣;) (2018年5月24日 17時) (レス) id: 37587c2084 (このIDを非表示/違反報告)
果凛(プロフ) - かきぴーさん» 返信が遅くなり、申し訳ありません汗 そこまで言っていただけるなんて……！ありがとうございます。目を擦ったら腫れるので、ちゃんとハンカチで押さえてくださいね。笑 (2018年3月21日 8時) (レス) id: 38593f3572 (このIDを非表示/違反報告)
かきぴー - さっきから目を開いても前がよく見えないと思ったら瞼が腫れてるだけでした。めっちゃ号泣しました！！！隊長イケメン！！好き！！好きです！！！最後は家族の元に旅立ってしまった男主でしたが、仲間の大切さがよくわかる話でした！！ (2017年12月15日 22時) (レス) id: 41dff5bdb3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：果凛 | 作成日時：2017年8月30日 17時
