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『…あ、奏汰先輩。こんな所にいたんですね』
千秋先輩から奏汰先輩を探すように頼まれて数十分。噴水にて発見しました。
てっきりいつものお気に入りの噴水にいるものだと思っていたんですが……。
見当はずれでした。少し離れた、温室の中にある噴水で浮いてらっしゃいました。
全く、この学園には噴水がいくつあるのでしょうか。ひとつあるだけでも珍しいというのに…。お蔭さまで、探すのがとても大変です。
「あ、A〜♪いっしょに『ぷかぷか』しませんか…?」
こちらの気も知らないでひらひらと手を振る先輩。溜息をこぼしたくなりますが、我慢です。
そうしたならば、きっと悲しい顔になるでしょう。
僕は、好きな人にわざと悲しい顔をさせるように仕向けるほど悪趣味ではありません。
『……いいですね、では失礼致します』
僕がお誘いに乗ったことが意外だったのでしょうか。少し驚いた後にはにかんできます。
普段奇行の目立つ奏汰先輩ですが、僕は可愛いと思います。先輩ですが。
……というか、僕がこのお誘いに乗ったのは理由があります。溺死できるかもしれないからです。というか、します。
奏汰先輩は、そんな事考えずに誘ってくださったのでしょうが。
『ふふふ……ぶく、ぶく……♪』
「ぷか、ぷか……♪」
ぷかぷか浮く奏汰先輩とは反対に、僕はどんどん沈んでいきます。温室の噴水は、校舎の近くにある噴水に比べて深いので沈みやすいですね……。
ああ、どんどん意識が霞んできました。
もう少し……。
「深海先輩、いるッスか!? …って、ああ!!
A先輩沈んでるじゃないッスか!!」
「んん……てとら、ですか…?」
「そうッス!! じゃなくて、A先輩!!」
意識の隅で声が聞こえます。走馬灯でしょうか。ということは、もうそろそろお迎えが来る頃なんですね。
ああ、お世話になった奏汰先輩の側で死ねるなんて、僕はなんて幸福なんでしょうか。
ざばあ、なんて身体が水から引き離される感覚に襲われます。天使が僕のお迎えに来てくださったのでしょうか。
意外と僕はロマンチストで、そういったことは信じています。
……まあ、そんな事今となってはどうでもいいですね。では、これにて失礼します。
「わぁぁぁあ!! A先輩!?
生きてるッスよね!?」
「おおお、おちついてください、てとら〜…」
「深海先輩こそ落ち着いてほしいッス!!
それは観葉植物ッスよ!!」
「あうう……」
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無名(プロフ) - 何年も前の作品みたいなのでお返事は返って来ないんだろうし伝わることもないのかもしれないとは思いつつも最高の話すぎてコメントを残したい。思わず涙出るほど感動しました。いいテンポで進んで読みやすかったです。最高の作品をありがとうございます。 (2023年1月3日 8時) (レス) @page47 id: 04d38e0bdf (このIDを非表示/違反報告)
咲耶(プロフ) - この話凄く好きです。感動しました! (2018年10月16日 5時) (レス) id: e18275a362 (このIDを非表示/違反報告)
早姫(プロフ) - 感動しました〜...!こう...仲間の大切さとか、友情ってこんな感じなんですかね?もしも、男主君が転生したら今度は幸せになって欲しいです〜!感動し過ぎて、涙が止まらず親に驚かれました...( ̄▽ ̄;) (2018年5月24日 17時) (レス) id: 37587c2084 (このIDを非表示/違反報告)
果凛(プロフ) - かきぴーさん» 返信が遅くなり、申し訳ありません汗 そこまで言っていただけるなんて……!ありがとうございます。目を擦ったら腫れるので、ちゃんとハンカチで押さえてくださいね。笑 (2018年3月21日 8時) (レス) id: 38593f3572 (このIDを非表示/違反報告)
かきぴー - さっきから目を開いても前がよく見えないと思ったら瞼が腫れてるだけでした。めっちゃ号泣しました!!!隊長イケメン!!好き!!好きです!!!最後は家族の元に旅立ってしまった男主でしたが、仲間の大切さがよくわかる話でした!! (2017年12月15日 22時) (レス) id: 41dff5bdb3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:果凛 | 作成日時:2017年8月30日 17時