一期「貴方とこのままずっと一緒に」 (ページ9)

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小さな我儘ページ9

Aside

こんのすけ「お待たせいたしました！加州様の調査が終わったのですよぅ！」

しんみりとした空気を壊したのは、どろんといきなり部屋に現れたこんのすけの高らかな声だった
こんのすけは静まり返る皆を見て首を傾げた

こん「…えっと…お取り込み中でしたか…？」

✿✿✿

こん「………というのが経緯なのです」
『なるほど…ありがとう、こんのすけ。歌仙のところへ行って油揚げを貰ってください』
こん「よろしいのですか！ありがとうございますぅ！」

こんのすけは器用に離の襖を開き、厨の方向へ歩いて行った

事の顛末はこうだった

前の主…私のお爺様が亡くなってから、加州は自分が泣くのも我慢し、初期刀として皆を懸命に支え続けたというのだ
自分の悲しみを発散する機会もなく、無意識に心の中を巣食っていた負の感情が、お爺様が生きていた頃の思い出の場所である鍛刀部屋がトリガーとなり、爆発してしまったのだという

こんのすけの話を聞いている最中、加州はとても気まずそうにしていた
安定はずっと加州の背中をさすっていた

加州「…ごめんね、主…俺…初期刀なのに、皆に迷惑かけちゃった…」
大和守「清光…」
『加州、貴方はもう少し我儘になっても良いと思います』

自分を押し殺して責務を全うしようとする加州が、過去の自分に重なってしまう

『自分の気持ちを隠して生きるのは…とても苦しいでしょう。私もそうでした。でも…』

一期や千音、皆を見る
この場所で出会った大切な人たち

『貴方の周りにいる人たちは、等身大の貴方を受け入れてくれますよ』
加州「！」

加州の目から大粒の涙が溢れる
泣いている顔を隠そうともせず、子供のように泣きじゃくる加州を見て、また目の奥がじんとする
離ではしばらくの間泣き声が響いていた

✿✿✿

しばらく経ち、瞼を赤くした加州が立ち上がった

加州「俺、自分の口で…今回のことを皆に話そうと思う」
『はい』
加州「…皆、怒るかな？」
『こんなことで怒るような刀は、この本丸にはいませんよ』
加州「……､……うん」

またじわりと涙が溢れそうになったようだったが、加州は自分の瞼をごしごしと擦った
安定と乱のことを見て、口を開いた

加州「…1人で行くのは怖いから…2人とも一緒に来てくれる…？」

最後の方は消えそうなほど小さな声だったが、初期刀のささやかな我儘に2人はにこりと微笑んだ

安定「今の清光じゃちゃんと説明できなさそうだから、僕も手伝ってあげるよ」
乱「僕も！」