兄の顔 ページ5
少し前
一期side
離から遠い方向から足音と怒鳴り声が聞こえる
五虎退と、薬研と…乱の声がよく聞こえる
乱…あの子は加州殿ととりわけ親しくしていたからな…
一期「無茶などしていないと良いのだが…」
戦場へと駆けながら私はそう独りごちた
❀✿❀✿
視線の、少し先
庭の中の時空移動ポータルへと繋がる道
そこで戦いが繰り広げられていた
先陣を切っていたのは、やはり乱藤四郎
乱は地面を強く蹴り、ふわりと宙に舞った
加州殿の面影が辛うじて感じられる化け物が振り下ろした刀は、見事に空を切った
そして、乱は落下に任せて刃を化け物の脳天にズブリと突き刺す
化け物の両肩に着地した乱だったが、化け物が痛みに身体を捩るため、体勢を崩してしまった
一期「みだっ…!」
鶴丸1「乱!!!」
一期「!」
化け物の殺意が一気に乱に向かうや否や、鶴丸殿が抜刀した本体を投げた
刀は見事化け物の心の臓を貫き、化け物が雄叫びをあげた
しかし、未だに化け物の上にいる乱は今にも落ちそうだ
それに、錯乱状態の化け物が、手に持つ刀を振り回しでもしたら、化け物の近くにいる乱が危ない
あいつの腕を、切り落とさなければ!
一期「乱!」
乱「う、わっ!」
右手に握った刀で化け物の右腕を切り落とし、空いた左腕で乱を受け止めた
カラン、と音をたてて化け物の刀が落ち、ぐちゃ、という音と共に腕も落ちる
腕の中に収まっている乱は、驚いたように私を見上げていた
乱「いち兄…」
乱に傷がないことが分かり、安堵からため息が出る
一期「単独行動も程々にしなさい…心臓に悪い…」
❀ ❀ ❀
べしっ
薬研が乱の頭を叩く
薬研「全くお前は!!足を切るだけと言ってただろうが!!!」
乱「いったーい!!だって殺れそうだったんだもん…」
薬研「自己判断で勝手に行動するな!刀剣男士が闇落ちした状態の時間遡行軍は通常の個体よりも強いんだぞ!」
乱「分かってたけど……ごめんね薬研…心配かけた…」
五虎退「み、乱兄さん…」
乱「ごこもごめんね…怖かったよね…」
乱は五虎退を抱きしめた
その顔は兄の顔そのものだった
ふと、普段、私もこのような顔をしているのかもしれないと思い、恥ずかしい気持ちになった
視界の端に白いものが動いた
そちらを見ると、鶴丸殿が化け物に刺さった乱藤四郎と鶴丸国永を抜いて、こちらに歩いて来ていた
私の目の前まで来て“弟”を私に手渡す
鶴丸1「君の弟、たまに脳筋だよな」
一期「…刀投げた貴方にだけは言われたくないです」
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作者名:リンリン | 作成日時:2024年3月22日 21時