黄緑色のペンライト2【stxxx】

＃２９.２ ページ9

「お母さん」


母「A何してるの！早く来なさい」


「は、はい」


てをひかれずんずんと進んでいく。


親戚からの目が怖い。


あっという間に棺桶の前だ。


お父さんの顔を見る。


肝機能が悪かったせいで顔色が悪い。


苦しみから解放されたような顔。


最後にあったのはいつだろう。


高校生？


そんなことを考えていると沸々と罪悪感と自己嫌悪が湧いてくる。


「…ちゃんと進学しなくて、ごめんなさい」


ぽつりと出た言葉。


急に悲しくなってくる。


母が私にあるものを渡してくる。


父のスマホだ。


youtubeの履歴を見せてきた。


≪履歴≫

・花は咲く/如月 【cover】

・【誕生日記念】December【オリジナル曲】

・ルマ/如月【歌ってみた】

・クリスマスソング/如月【cover】

・シャルル/如月【歌ってみた】

・花は咲く/如月 【cover】

・【すとぷりハニワ歌ってみたツアー】テレカクシ思春期/如月【歌ってみた】

・僕たちの未来/如月 【cover】

・エイリアンエイリアン/如月 【歌ってみた】

・シャルル/如月【歌ってみた】

・花は咲く/如月 【cover】

・乙女解剖/如月【歌ってみた】
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履歴は私の歌ってみたばかりだ。


母「お父さんもうすぐ死ぬ、って知ったらずっとあんたの曲聞いてて…」


母が涙ぐむ。


お父さん…


きっとわからないボーカロイドを何回も聞いていたんだろう。


母「お父さんが…Aは大学なんかよりこっちのほうが似合ってるって…」


母「俺は娘の綺麗な歌声が聞けて幸せだ、って…」


母が泣き崩れる。姉がいそいで駆けつけて背中をさする。


私の歌を聞けて、幸せだったんだ。


お父さんは最期まで私の歌を聞いてくれていた。


こんな親不孝者の。


大学を蹴ってネットに入り込んだバカの。


私だったら怒るし、嫌だ。


私は…最低な人間なのに…


許してくれた…？


姉「あんたのCD買ってたのみた」


「えっ…」


姉「あんたが努力して、積み重ねてすごい人気になったの見てるよ。」


兄「だよな、Aはやっぱり大学に行くよりこっちに向いてるもんな」


なぜだか涙が溢れだす。


認められていたうれしさ。


ようやくわかった父の存在の偉大さ。


父との思い出に浸り、涙を流した。

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