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松陽は、私を一瞥してから小さな息を口の隙間から吐いた
彼は、何か言いたげに言葉選びをしたようだったが、結局諦めてしまったようだった
松陽「最近、修行がご無沙汰だったから稽古をつけてくれ…と、貴女は言いましたけど…慰めてもらうための口実でしたか?」
揶揄する口振りで言った彼の笑は、子供のようだった
松陽の表情を横目で見て、無意識に鼻にかかる笑いを漏らした
A「…案外間違いじゃないかも」
一人語りをするには、丁度いい夕暮れ。私をスポットライトで照らしてくれて、私をこの瞬間だけ主役にしてくれる
松陽は、いつものように沈んでいく私の雰囲気に気づいて、少し開いた口をゆっくりと閉ざしていった
瞬きをすれば、まつ毛が夕日でチカチカして眩しい
あたりがモノクロになる前
A「…私さ、前に松陽に言ったよね。シオンを助けたいって…
でもね、分からなくなってきちゃって。
時間は少なくても、桂と高杉と過ごした時間は今まで以上に楽しかったし、掛け替えのないものになったよ。
自分は、シオンを助けたい。何を犠牲にしても、誰を傷つけても、誰かを殺すことになっても…
絶対助けたい。その気持ちは変わらない。
だけど、高杉達と距離を置いて…もしも、道が逸れてしまったら…?レールが壊れてしまったら…
彼らはどうなってしまうのか、私には分からない。
分からないの。」
俯く少年の姿を借りた少女は、伸びた背筋は丸まって見え、大きな手は小さく、虚ろな目は泣きそうなほど潤んで見えた
これが、彼女の本当の姿。
なんでも卒なくこなせて、非の打ち所がなく、器用で、それでいて感情を隠すのも、他人に気を使うのも上手い
それが、彼女をこうさせてしまった原因であった
実の両親に殺されかけても、どこにも居場所がなくても、人生でたった一度の大切な人を失っても
彼女は、彼女のままだった
彼女は、何度も自分を殺してきた。何度も、何度も
そうして、彼女という容器はあまりにも歪に歪み、今までの自分の屍の頂上に立って、いつもの様に笑う彼女さえ屍であった。
自分の見分けすら、ついていない。
もう穴が空いてしまって、新しい水を注げない
彼女という容器は、もう許容量を超えてしまっている
それを治す手立てなど、私には分からない。
松陽「…………」
今はただ、彼女が更に自分を殺さないように
静かに抱きしめることしか出来ない
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ToaRin.人形劇の人形師(プロフ) - キラリ&キララさん» 返信が遅くなってしまい申し訳ございません。話数を間違えてしまったので修正させていただきました。わざわざご指摘頂き、ありがとうございます。 (2018年6月22日 20時) (レス) id: ae3734b391 (このIDを非表示/違反報告)
キラリ&キララ(プロフ) - すみません"途中"まで一緒な気がするでした (2018年6月18日 16時) (レス) id: 8fa86492e9 (このIDを非表示/違反報告)
キラリ&キララ(プロフ) - 102と103が同じな気がするんですが……気のせいですかね?気のせいならばごめんなさい (2018年6月18日 16時) (レス) id: 8fa86492e9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ToaRin | 作成日時:2018年5月15日 19時