【銀魂】呼吸する音 2【銀時成り代わり】

75 ページ43

─桂side─


「バシャッ」


「うっ」


顔が突然冷えきり、首筋に水滴が滴った


理解できない状況を理解するべく、くっついた瞼をこじ開ける


「お目覚めかい？」


そこに居たのは、見たことのない男の顔


桂「誰だ貴様…」


名を問い他と同時に思い出したのは、ズキズキと痺れる痛みを持つ後頭部と、泉の救出について


桂「ぃずみっ…」


か細く、掠れた声で彼の名を呼ぶ


慌てて、辺りを必死に見回す


「桂さんっ…」


俺の名前を読んだ声の主を見つけるのには、そう時間はかからなかった


ゆっくりと進む視界が彼のかおを認識しようとした


しかし、眼球が水の膜に覆われ、ぼやけて上手く見えない


とめどなく溢れる涙の理由なんてわからない


涙を振り払い、彼をしっかりと見つめる


高い背はさらに高くなり、大人に近かった顔つきは更に大人へと近づき、髪は伸び、目元がはっきりとしていた


そして、ボロボロになった顔と体をみて憤りを感じた


桂「泉…」


彼の名前を呼ぶことしか出来ない


泉「桂さん…逃げて、ください…」


咳き込みながら、逃げてと乞う泉


そんな泉見たくない


見ていられない


喉の奥がヒュッと鳴った


桂「逃げない！！俺は逃げない！！」


いきなり喚き散らしだす俺に全員が戸惑う


きつく絞められた縄を振りほどこうと暴れる


「おい！このガキを抑えろ！！」


「ダンっ」


激しい音をたてて、俺は呆気なく床に押し付けられた


もう現実から逃げてなるものか


俺は、泉と話をするんだ


「おいおい、感動の再開のところ悪いけど…命がかかってること忘れないでね」


名前も素性もしれぬ男を睨む


今、俺は明らかにこの場にいる下品な男ども全員に憤慨している


泉が何をしたっていうんだ


嗔恚が腹の底から這い上がってくる


「命って言われてもわかんねーよなぁ…お前さ、こいつがお前の親父殺したのしってるよな？


殺したいと思わねーノ？」


汚い面をしたその男に大して抱いたものは


どうでもいい


その一言だけだった


桂「こんな幼稚な挑発に乗ると思ってるのか？


頭まで腐りきっているんだな


腑抜けが」


今までしたことのないような表情で煽る


慙愧という言葉を知らなさそうな阿呆らしい口ぶりと振る舞いには呆れた


その言葉に痺れを切らしたその男は上げていた口角を下げ、目を血走らせ、俺を見下ろした


俺に視線を向けさせればいい


その調子で阿呆でいてくれ


そうすれば。隙を作って泉を逃せる

76→←74

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す