第百五十三話「駟不及舌」 ページ16
ゾルル「そういう訳でございます」
静寂が彼らを包む。
ゾルル「申し訳ありません」
男は哀れに頭を下げた。
勿論、何も悪くなどない
そしてこれで事が収まるわけでもない事など分かっていたが、そうすることしか今の彼には出来なかった。
ドロロ「…」
ドロロ「のこのこ帰ってきて真っ先に出た言葉がそれでござるか？」
ドロロ「謝罪など誰が願い申した？」
ドロロ「僕はただあの子が欲しい」
ドロロ「それ以外何もいらない、」
言葉を荒げるでもない、物に当たるでもない。
しかし彼の言葉はやけにこの静寂に響いている。
ドロロ「ったく、使えないでござるな早く彼女を…！」
ゾルル「お言葉ですが」
蛇に睨まれたカエルはただ黙って震えるだけではない。彼はため息をついて言葉を紡いだ。
ゾルル「ご主人様は些か傲慢が過ぎるのではないでしょうか？」
ゾルル「ご主人様はあの娘に対して何を致しましたか？」
ゾルル「…あれもこれも欲しいと言って何でもかんでも手に入ると思うなよガキが」
ドロロ「…」
ゾルル「これ以上ご主人様が私の部下及び、
…あの娘に危害を加えるようでしたら私はご主人様を排除致します。」
ゾルル「一度、ご自身を振り返ってみては如何でしょう？」
主人の言葉を待つより先に彼は歩き出し、この部屋から出ていく。
正真正銘、彼は本当に一人ぼっちになってしまった
ドロロ「…」
自分は何も出来ない
そんなやるせなさが彼を襲う
ドロロ「一体」
ドロロ「一体拙者はどうすれば良かったでござるかなぁ」
一体どこから間違ったのか
彼女以外何もいらない、彼女だけが唯一の望みなのに
どうしてそれすらも叶わない？
どうしてあんな男に彼女を奪われ続ける
ドロロ「僕がクルル君より劣ってるんだろうなぁ」
ドロロ「あぁ」
ドロロ「こんな泣き言を吐く弱い男などA殿は眼中にないでござるよね」
今の間にもA殿とクルルは想いを寄せ合い、隣に居るのだろう。
ドロロ「…」
ぼくが、僕だけが
僕だけの、渇望が叶わない
“一度ご自身を振り返ってみては如何でしょう？“
ドロロ「彼女の笑顔が見たかった」
ゆっくりと想いを復唱する。
ドロロ「彼女のそばにいたかった」
ドロロ「彼女を愛していた」
ドロロ「だから、彼女に幸せになって欲しかったんだ」
それは誰の手で？
“彼女が思い描く未来に自分がいないのが許せない”
かつての叫びは今もここにある
ドロロ「拙者は…」
もう戻れない。
投げられた賽は帰っては来やしないのだ。
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こも(プロフ) - 好きすぎて何周かしました…がち大好きです…続き待ってます！！ (1月30日 21時) (
レス) @page19 id: c580577939 (このIDを非表示/違反報告)
みまさかや(プロフ) - 四字熟語の意味とか伏線とかめっちゃ気になります！！話構成やキャラがすごく立っていて素晴らしいです！！続き出されるのか分かりかねますが有れば飛び上がって喜ぶ自信があります。執筆活動頑張ってください！ (2021年5月30日 1時) (レス) id: a432ddc5a7 (このIDを非表示/違反報告)
ネコメ - 続きを楽しみにしてます。頑張ってください！ (2021年5月24日 21時) (レス) id: 38063781d3 (このIDを非表示/違反報告)
ルト(プロフ) - 更新されてて泣きました....ありがとうございます。大好きです。応援しています。 (2020年7月25日 18時) (レス) id: 1af78e2485 (このIDを非表示/違反報告)
メフィ - 気になる.....気になっちゃうよーーーーー！！！！！ (2020年7月3日 21時) (レス) id: 2ce8d674b4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：提琴 | 作成日時：2015年9月10日 22時
