紫苑 ページ6
【堀川side】
僕は、何かを叫んだ。
僕の前髪を掠めて落ちていくそいつの手を見ながら、
皆がそいつの名を呼ぶ声を聞きながら、
僕は、何かを叫んでいた。
*
*
*
全身に掛かっていた独特の圧が霧散していく。
炎のせいでやけに暑かった空間から一転して、荘厳な気配を放つそこは何処か肌寒かった。
荘厳な気配を放つ、石造りのその空間。
_本丸の、時空転送場。
「主!!!」
鋭く響いた兼さんの声に顔を上げる。視界に、右目を蒼く染めた主さんの姿を捉えた。
「A!!」
僕らのもとに駆け寄ってきた主さんは、しゃがみこんでAに呼びかける。けれど、閉ざされたAの瞳は開かれなかった。
「主!」
「長谷部、南泉、頼む!」
続いて転送場へ駆け込んできた二人の手にある担架に、陸奥守さんがAを抱き上げて移す。
...僕はそれを、ぼんやりと見ていて。
「_広、おい、国広!!」
「...!」
兼さんに名前を呼ばれて我に返る。
だけど。
「っ...」
「...国広?」
Aを見て、震えが止まらなかった。
命の火が消えかけてる。Aが死んでしまうかもしれない。
そういった震えもきっとある。
でも、これは_
「がっ...はっ!!」
「「!!」」
「A!!!」
突如、ごぽ、と血反吐を吐きながらAが意識を取り戻した。弾みに勢いよく上半身を起き上がらせて大きく咳き込む。
「ごほっ、がはっ...はっ、」
「A!!起き上がったら...!」
「っ...あ、ぐ...う、あぁっ...」
「...A...?」
すぐさま横たわらせようとした主さんが、心臓を掻き毟り、苦しげに意味を成さない嗚咽を漏らすAの異変に気づく。
刹那、Aの頬に蒼い亀裂が走った。
「「!?」」
ひゅっと誰かが息を呑む。けれどそれは、よく見れば亀裂ではなかった。
首から頬にかけて走るそれは、蒼い痣。
そして、僕らは見た。
「......髪、が...」
肩までの長さを持つAの雪色の髪が、ゆっくり伸びていくさまを。
その光景に誰もが驚きに目を瞠る中、主さんが宥めるようにAに語りかけた。
.
「大丈夫だ。落ち着け、雪」
その瞬間、Aは再び意識を手放す。
力なく横たわったAは、長谷部さんと南泉さんによって手入れ部屋へと運ばれて行った。
「...っ」
「堀川!」
かくんとその場に膝を着いた僕を呼ぶ鯰尾くんの声が、随分くぐもって聞こえた。
.
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不透明どろっぷ。(プロフ) - 前回のやつと今回で涙腺が緩んで戻らなくなってしまいました(号泣) とても凝った話ですね! (2021年3月1日 22時) (レス) id: a7e7752e52 (このIDを非表示/違反報告)
ニャンコソバ2(プロフ) - 狩歌さん» やったぁぁ!!楽しみにしてますねっっ!! (2019年4月21日 20時) (レス) id: 5238a033a3 (このIDを非表示/違反報告)
狩歌(プロフ) - ニャンコソバ2さん» ニャンコソバさんこんにちは!ありがとうございます〜!楽しんでいただけたなら幸いです(*´∀`*)リクエスト了解しました!リア充させますよ〜! (2019年4月21日 9時) (レス) id: 8b0337ee0c (このIDを非表示/違反報告)
狩歌(プロフ) - しおねーさん» ありがとうございます!もうしばしお待ちください〜 (2019年4月21日 9時) (レス) id: 8b0337ee0c (このIDを非表示/違反報告)
ニャンコソバ2(プロフ) - お、お疲れさまでした…(?)貯めに貯めて、一気に読みましたところ、涙腺が見事に崩壊しました。笑堀川くんとリア充するやつ見てみたいです( (2019年4月21日 8時) (レス) id: 5238a033a3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:狩歌 | 作成日時:2019年2月18日 19時