雲間からの月明かり ページ16
【堀川side】
「その通り。...さすが元監査官」
思考が一重にも二重にも重なって重たい頭に響いた声に顔を上げる。
食堂の入口に寄りかかるように立った主さんの姿に、息が詰まった。
「主さ、」
「主、Aは!?」
上手く呂律の回らない僕の言葉を遮るように主さんに詰め寄った陸奥守さんの言葉は、この場に居る皆を代表した問いだった。
それに主さんは、小さく笑って。
「...無事だよ」
その言葉に、ふっと全身の力が抜けた。
張り詰められていた数多の糸の一つが、ぷつんと弛緩する。
「...Aさん...良かったぁ...」
「つうわけで、あいつのこと部屋まで運んで着替えさせてやってくれねえか?...見ての通り、俺今こんなんだから」
そう言って困ったように笑った主さんの顔色は青白く、身に纏う霊力もいつもより弱々しく感じた。...多分、Aの手入れに相当な量を消費したのだろう。
「引き受けよう」
頷いた岩融さんと石切丸さん、そして乱くんと信濃くんが食堂を後にする。
それを見送った主さんは、次に兄弟に声をかけた。
「山姥切」
「何だ?」
「今出払ってるのは遠征に行った第三部隊だけだろ?そいつら呼び戻してくれ」
「鳩は切らしてるが...」
「強制帰還でいい」
「...」
「全員に話がある」
主さんのその言葉が、静かに、でもしっかりとその場に沈み込んでいった。
*
*
*
「アタシらが遠征中の間にそんなことが...」
突然の主さんからの命を受け慌ただしく帰還した第三部隊_次郎太刀さん達が、本丸での今までの出来事を聞き大きく息を吐く。
「やけん、主から突然帰還要請があったばいね。...Aちゃんがそげんことになっとったなんて...」
眉根を寄せ唸った博多くんが、一期一振さんを不安げに見上げる。それを宥めるように、一期一振さんが博多くんの頭を優しく撫でた。
「まあ取り敢えず突然の帰還命令の理由は分かったが...全員に話がある、ね...。一体何の話なんだ?」
「そりゃ今回の...Aに関することだろ」
お酒を煽る日本号さんに応えた御手杵さんの言葉に、場の空気がまた少しずつ張り詰める。
近づきつつある全ての問いの答え合わせを知りたいと誰もが願って、でも頭には、先程の長義さんの言葉が過ぎるから。
「全員居るな」
「「!!」」
暖簾を潜り食堂に顔を出した主さんに全員が顔を上げる。
その手にはいつも主さんが腰に据えている小刀が握られていた。
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不透明どろっぷ。(プロフ) - 前回のやつと今回で涙腺が緩んで戻らなくなってしまいました(号泣) とても凝った話ですね! (2021年3月1日 22時) (レス) id: a7e7752e52 (このIDを非表示/違反報告)
ニャンコソバ2(プロフ) - 狩歌さん» やったぁぁ!!楽しみにしてますねっっ!! (2019年4月21日 20時) (レス) id: 5238a033a3 (このIDを非表示/違反報告)
狩歌(プロフ) - ニャンコソバ2さん» ニャンコソバさんこんにちは!ありがとうございます〜!楽しんでいただけたなら幸いです(*´∀`*)リクエスト了解しました!リア充させますよ〜! (2019年4月21日 9時) (レス) id: 8b0337ee0c (このIDを非表示/違反報告)
狩歌(プロフ) - しおねーさん» ありがとうございます!もうしばしお待ちください〜 (2019年4月21日 9時) (レス) id: 8b0337ee0c (このIDを非表示/違反報告)
ニャンコソバ2(プロフ) - お、お疲れさまでした…(?)貯めに貯めて、一気に読みましたところ、涙腺が見事に崩壊しました。笑堀川くんとリア充するやつ見てみたいです( (2019年4月21日 8時) (レス) id: 5238a033a3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:狩歌 | 作成日時:2019年2月18日 19時