溶ける雪 ページ42
.
炎が出口を閉ざすと、熱さと血の匂いがより一層感覚器官を支配した。
しかしAにそれを感じている余裕はない。伸ばされた手と頭ががくりと力無く垂らされる。
「...」
ぴくりとも動かなくなったAを一瞥した大太刀は、ずる、と彼女の腹部から刀を抜いた。鋼の刀身を鮮血が流れ落ちる。
瞬間、大太刀の首が飛んだ。
「っ...はっ...」
血反吐を吐きながら、Aはかかったと内心ほくそ笑む。
「...演技だばーか」
力が抜けて体が震える。全身が鉛のように重い。
それでも不敵に笑ってみせたAは、霞む視界の先に捉えた残党達に刀を向け挑発する。
炎を映した白銀が、鈍く光った。
＊
＊
＊
「...A、さん...？」
掠れた声で炎の向こうに消えた人物の名を呼んだのは、微かに意識を取り戻した真白だった。
しかし返事など当然なくただ轟々と威力を増した真紅が燃え上がる。
思考回路がまともに働いている者は、誰一人としていなかった。
「...A、」
冬夜達が無事だった。
出口が塞がれた。
Aがまだ中にいる。
刺された。
助けなくては。
どうやって。
それに、
"これ"は何だ。
絶望の色を宿した目で彼女の名を呟いた和泉守は、ゆるゆると冬夜の足元に転がる"それ"に目を向ける。
冬夜達が転がり出てくると同時に、外に放り出された"それ"。
焼け焦げてしまった紫色の布が所々にこびり付いた、白い鞘に銀の装飾が施されている"それ"。
"それ"は、紫空切氷雪そのものだった。
「冬夜、真白!!」
ただ多量の情報だけが目の前に散乱していて、それの整理が追いつかない。そんな彼らの耳に、その声が聞こえた。
「大将、」
「無事だったか!!」
良かった、と彼らを抱き締める大将に、冬夜がうわ言のように声を漏らした。
「...が、中に、いるんだ」
「え？」
「...Aさんが、まだ中にいるんだ」
それを言葉にした途端、漸く彼は現実を理解する。
「Aさんがまだ中にいるんだ!!」
「お、おい、」
縋るように大将に叫んだ冬夜は、灰紫の瞳から涙を流しながら訴える。
「俺達のこと助けて、まだ中にいて...刺された...Aさん、」
生きてって、言った。
.
ばしゃっと水の音が響いた。
和泉守が顔を上げると、髪の先から水を滴らせた堀川が、炎めがけて駆け出す。
「国広!!」
堀川は足を止めない。
止める理由なんか、何処にもなかった。
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狩歌(プロフ) - 作者さん» 私も作者さんのコメントで大泣きしました。ありがとうございます...！！ (2020年2月14日 8時) (
レス) id: 8b0337ee0c (このIDを非表示/違反報告)
作者 - 大泣きした…もうやばい…語彙力低下した… (2020年2月14日 1時) (レス) id: 514b4bbba8 (このIDを非表示/違反報告)
狩歌(プロフ) - かふぇいんさん» 告白されちった(違う)。そんなこと言っていただけて感無量です。ありがとうございます！リクエスト了解しました！もうしばしお待ちください！ (2019年2月10日 22時) (レス) id: 8b0337ee0c (このIDを非表示/違反報告)
かふぇいん(プロフ) - 連続でコメントすみません…！夢主ちゃんの質問コーナーみたいな茶番が見たいです。ぜひお願いします！ (2019年2月10日 22時) (レス) id: 67bbfad4af (このIDを非表示/違反報告)
かふぇいん(プロフ) - すき。すきです。すきしかでてこないです。これからも心から応援してますッ…！ (2019年2月10日 22時) (レス) id: 67bbfad4af (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：狩歌 | 作成日時：2018年12月28日 13時
